「同じ退職なのに、会社都合か自己都合かで、こんなに変わるなんて知らなかった」。これは、退職相談の面談でいちばん多く聞く後悔のひとつです。離職理由の区分は、失業保険をいつから・何日分・いくら受け取れるかを大きく左右します。
しかも差は失業保険だけではありません。国民健康保険料の軽減まで関わってきます。この記事では、元人事の立場から、厚生労働省とハローワークの一次情報をもとに、会社都合と自己都合の「3つの差」と、あなたの離職理由をできるだけ有利に確定させる方法を、やさしく整理します。
- 会社都合と自己都合で変わる3つのこと(もらい始める時期・日数・国保)
- 自分の年齢と加入期間で給付日数が何日になるか(早見表つき)
- どんな辞め方が「会社都合」あつかいになるのか(特定受給資格者の範囲)
- 「自己都合にして」と言われたときの断り方と異議の出し方
会社都合と自己都合で変わるのは、この3つ
まず全体像です。会社都合退職(正確には「特定受給資格者」など)と、自己都合退職(一般の離職者)では、主に次の3点が変わります。ここを押さえれば、この記事の9割は理解したのと同じです。
| 変わること | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
|---|---|---|
| もらい始める時期 | 待機7日+給付制限(原則1か月) | 待機7日のみ(給付制限なし) |
| 所定給付日数 | 90〜150日 | 90〜330日(長い) |
| 国保の軽減 | 対象外 | 対象(保険料が下がることがある) |
【差1】失業保険を「もらい始める時期」が違う
失業保険(雇用保険の基本手当)は、ハローワークで手続きをしても、すぐには振り込まれません。どちらの場合も、まず7日間の待機期間があります。差が出るのはそのあとです。
自己都合は「給付制限」がある(2025年4月から原則1か月に短縮)
自己都合で辞めた場合、待機7日のあとに給付制限期間があり、その間は支給されません。この期間は長らく「原則2か月」でしたが、2025年4月1日以降に離職した人からは原則1か月に短縮されました。
・離職の前後に自分で教育訓練(対象講座)を受けた場合は、給付制限が付かない取り扱いがあります。
・自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)は、会社都合ではなく給付制限3か月の対象です。
会社都合は待機7日だけ。すぐに支給が始まる
会社都合(特定受給資格者・特定理由離職者)の場合、給付制限はありません。待機7日が終われば、そのあとの認定を経て支給が始まります。生活費が心配な時期に、1か月でも早くお金が入る意味は小さくありません。
【差2】もらえる「日数」がまるで違う
ここが金額にいちばん響く差です。失業保険を何日分もらえるか(所定給付日数)は、離職理由・離職時の年齢・雇用保険の加入期間で決まります。会社都合のほうが、日数が大きく設定されています。
自己都合・定年など(一般の離職者)の給付日数
自己都合で辞めた場合の日数はシンプルです。年齢に関係なく、加入期間だけで決まります。
| 雇用保険の加入期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
※加入期間が原則12か月に満たない場合は、そもそも基本手当の受給資格を満たさないことがあります。
会社都合など(特定受給資格者・一部の特定理由離職者)の給付日数
会社都合の場合は、年齢と加入期間の組み合わせで、最大330日まで設定されています。自分の年齢の行を、加入期間の列で見てください。
| 年齢 | 1年未満 | 1〜5年 | 5〜10年 | 10〜20年 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | — |
| 30〜35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35〜45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45〜60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60〜65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
【差3】国民健康保険料の「軽減」が受けられる
見落とされがちですが、会社都合はもうひとつ得をします。退職して国民健康保険に入る人向けの「非自発的失業者の保険料軽減」です。
倒産・解雇・雇止めなどで職を失った特定受給資格者・特定理由離職者(離職時65歳未満)は、国保料の計算で前年の給与所得を「100分の30」とみなして計算してもらえます。所得を実際の3割として扱うため、保険料が大きく下がることがあります。
| 対象 | 雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者(離職時65歳未満) |
| 内容 | 前年の給与所得を100分の30とみなして国保料を算定 |
| 期間 | 離職日の翌日の属する月から、その翌年度末まで |
| 手続き | 自動ではない。市区町村の窓口で申請が必要(雇用保険受給資格者証などを持参) |
ここまで読んで、「本当は会社都合なのに、自己都合で辞めさせられそう」「そもそも、辞めると言い出せない」と感じた方もいるかもしれません。自分で会社に向き合うのが難しいときは、退職の意思を代わりに伝えてくれる退職代行という選択肢もあります。
そもそも「会社都合」あつかいになるのはどんなとき?
会社都合=特定受給資格者になるのは、解雇だけではありません。ハローワークの基準では、次のようなケースも「倒産・解雇等」に含まれます。自分が当てはまらないか、チェックしてみてください。
解雇された(自分の重大な責任による解雇を除く)
倒産・事業所の廃止・大量の人員整理にともなって離職した
賃金の未払い:支払われるべき賃金の3分の1超が、期日までに支払われない月があった
賃金の大幅な低下:賃金が前より85%未満に下がった(予見できなかった場合)
長時間の残業:連続3か月で45時間以上/1か月100時間以上/連続2〜6か月平均で80時間超の時間外労働があった
ハラスメント:上司や同僚から、故意の排斥や著しい嫌がらせを受けた
退職勧奨:会社から退職を勧められて辞めた(早期退職優遇制度への応募は除く)
採用時に示された労働条件が、実際と著しく違っていた
自己都合でも「会社都合に近い」あつかいになる人がいる
「解雇されたわけじゃないけど、自分から辞めたくて辞めたわけでもない」。そんな人のために「特定理由離職者」という区分があります。主に次の2つのタイプです。
① 契約が更新されなかった(雇止め)
有期契約で働いていて、更新を希望したのに更新されなかった場合。このタイプの特定理由離職者は、給付制限がなく、会社都合と同じ給付日数の表が使われます(一定の条件を満たす場合)。
② 正当な理由のある自己都合
自分から辞めた場合でも、次のような「正当な理由」があれば特定理由離職者と認められることがあります。給付制限がなくなる点で、通常の自己都合より有利です。
体力の不足、病気やケガ、心身の障害などのため離職した
妊娠・出産・育児などで離職し、受給期間の延長措置を受けた
父母の死亡・疾病・介護など、家庭の事情が急変した
配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが難しくなった
結婚にともなう転居、事業所の移転、通勤手段の廃止などで通勤が困難になった
自分の離職理由は、離職票のどこを見ればいい?
離職理由は、退職後に会社から受け取る「離職票-2」に書かれています。会社が丸をつけた離職理由と、あなたが認識している理由が違うことは、実際によくあります。
会社が記入した離職理由に◯が付いています。まずここを見ます。
「離職者記入欄」に、事業主が◯を付けた理由に異議がある/ないを記入する欄があります。異議ありを選べます。
手続きの際に、実際の経緯と、それを裏づける資料(給与明細・タイムカード・メール等)を提示します。
離職理由は会社の言い分だけで決まるわけではありません。両方の主張と資料をもとに判定されます。
「自己都合にしてほしい」と言われたら、どうする?
会社側には、会社都合退職を出したくない事情があることがあります(助成金の要件などに影響するため)。そのため、退職勧奨で辞めさせる一方で「離職票は自己都合にしてほしい」と頼まれることがあります。
その場で退職届に「一身上の都合により」と書くよう求められても、鵜呑みにしない
会社から勧められて辞めるなら、経緯をメールやメモで記録に残す
離職票が届いたら、離職理由欄を必ず自分で確認する
事実と違えば、離職者記入欄で「異議あり」を選ぶ
判断に迷うときは、離職票を持ってハローワークに相談する
「退職勧奨がつらくて、もう会社と直接やり取りしたくない」というときは、退職の連絡そのものを代わりに担ってくれるサービスを使う手もあります。自分の心を守ることを最優先にしてください。
よくある質問
まとめ|離職理由は「軽く決めない」
会社都合と自己都合の違いは、①もらい始める時期(給付制限)②所定給付日数③国保の軽減の3点に表れます。特に給付日数は、同じ条件でも2倍近く変わることがあります。
大切なのは、離職理由は会社の記入だけで最終決定されるわけではないということ。退職勧奨や長時間労働、ハラスメントなど心当たりがあるなら、離職票の記載を確認し、必要なら異議を出す。それだけで結果が変わることがあります。
「もう会社と話したくない」「辞めると言い出せない」——そのために体調を崩してしまう前に、退職の連絡を代わってくれるサービスを頼るのも、ひとつの守り方です。自分の生活と心を守る選択を、遠慮なくしてください。
※本記事は2026年8月時点で、厚生労働省・ハローワークの公表情報および各制度の一般的な取り扱いをもとに作成しています。給付制限期間・所定給付日数・国民健康保険料の軽減などの制度は改正されることがあり、個別の適用可否・金額・支給開始時期は、離職の状況や自治体によって異なります。実際の手続きの前に、必ず管轄のハローワークやお住まいの市区町村の窓口で最新の内容をご確認ください。当サイトはアフィリエイト広告を掲載していますが、報酬の有無で内容を変えていません。



