「65歳を過ぎて辞めたら、失業保険はもうもらえない」と思っていませんか。もらえます。名前が変わって「高年齢求職者給付金」になり、30日分または50日分を一括で受け取れます。しかも年金と同時に受け取れて、受け取った直後に再就職しても返す必要がありません。
人事・労務として10年、定年再雇用の方の離職手続きを何度も担当し、退職支援の会社で1,000件以上の相談を受けてきた立場から、受給条件・金額の計算・いつもらえるか・年金との関係・64歳で辞めるのと65歳で辞めるのはどちらが得か・手続きを整理します。
・受給条件(被保険者期間6か月以上・失業の状態)
・金額:30日分か50日分か、基本手当日額の計算式と上限
・いつもらえるか:待期7日・自己都合の給付制限・一括支給
・老齢年金と併給できる/再就職しても返さない/何度でももらえる
・64歳で辞める vs 65歳で辞める、どちらが得か
・手続き・必要書類・期限(離職翌日から1年)
高年齢求職者給付金とは|65歳以上の「失業保険」
雇用保険に加入している65歳以上の人は「高年齢被保険者」と呼ばれ、離職して失業状態になったときに受け取るのが高年齢求職者給付金です。64歳までの「基本手当(いわゆる失業保険)」に相当する制度ですが、仕組みが大きく違います。
| 基本手当(64歳まで) | 高年齢求職者給付金(65歳以上) | |
|---|---|---|
| 支給の形 | 4週ごとの認定日に、認定された日数分を分割で受給 | 一括(1回の認定で全額) |
| 支給日数 | 90〜330日(年齢・加入期間・離職理由で決まる) | 被保険者期間1年以上:50日分/1年未満:30日分 |
| 老齢年金との関係 | 特別支給の老齢厚生年金は支給停止 | 併給できる(年金は止まらない) |
| 受給後の再就職 | 残日数によっては再就職手当。受給中の就職で残りは打ち切り | 受け取った直後に就職しても返さなくてよい |
| 回数 | 受給後は被保険者期間がリセット | 再び雇用保険に加入して離職すれば何度でも受けられる |
| 必要な被保険者期間 | 離職前2年に12か月以上(会社都合等は1年に6か月) | 離職前1年に6か月以上 |
受給条件|2つだけ
| 条件 | 内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| ① 被保険者期間 | 離職の日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算6か月以上 | 離職票−2の被保険者期間欄。複数の会社をまたいで通算できる |
| ② 失業の状態 | 働く意思と能力があり、求職活動をしているのに就職できていない | ハローワークで求職申込みをする。「もう働かない」と申告すると対象外 |
金額はいくら?|30日分か50日分か、計算式と上限
日数の判定
| 離職前の被保険者期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 1年以上 | 基本手当日額 × 50日 |
| 1年未満(6か月以上) | 基本手当日額 × 30日 |
基本手当日額の計算
| 例:離職前の月給(6か月平均) | 賃金日額 | 基本手当日額の目安 | 50日分の目安 |
|---|---|---|---|
| 15万円 | 5,000円 | 約4,000円(給付率80%) | 約20万円 |
| 24万円 | 8,000円 | 約5,200円 | 約26万円 |
| 36万円 | 12,000円 | 約5,400円 | 約27万円 |
| 45万円 | 15,000円 | 約6,750円(給付率45%) | 約34万円 |
| 52万円以上 | 17,400円〜 | 上限の7,830円 | 約39万円(上限) |
いつもらえる?|待期7日・給付制限・一括振込
| 退職理由 | 受給までの流れ | 初回振込の目安 |
|---|---|---|
| 定年・契約期間満了・会社都合 | 求職申込み → 待期7日 → 認定日 → 一括振込 | 求職申込みから約1か月 |
| 自己都合 | 求職申込み → 待期7日 → 給付制限1か月(2025年4月以降)→ 認定日 → 一括振込 | 求職申込みから約2か月 |
| 重責解雇 | 給付制限3か月 | 約4か月 |
基本手当と違い、認定は原則1回です。認定日に失業の状態が確認されれば、30日分または50日分が数日後にまとめて振り込まれます。認定日までに求職活動の実績が必要(原則1回以上。ハローワークの案内に従う)なのは基本手当と同じです。
年金と併給できる・再就職しても返さない・何度でももらえる
| よくある疑問 | 答え |
|---|---|
| 老齢年金をもらっていても受給できる? | できます。65歳以降の老齢基礎年金・老齢厚生年金は高年齢求職者給付金と併給でき、年金は止まりません(64歳までの基本手当は特別支給の老齢厚生年金が停止されるのと大きく違う) |
| 受け取った翌週に再就職が決まった。返す? | 返しません。一時金なので、受給後の就職で返還や調整はありません |
| 再就職先を1年で辞めた。また受給できる? | できます。新しい勤務先で雇用保険に加入し、離職前1年に6か月以上の被保険者期間があれば、再び30日分または50日分を受給できます |
| アルバイト・パートでも対象? | 週20時間以上・31日以上の雇用見込みで雇用保険に加入していれば対象。受給の認定日までにアルバイトをした場合は申告が必要 |
| 税金はかかる? | かかりません(雇用保険の給付は非課税)。確定申告にも書きません |
64歳で辞めるか、65歳で辞めるか|どちらが得?
「65歳の誕生日の前に辞めると失業保険(基本手当)が最大150日もらえるから得」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは半分正しく、半分は状況次第です。
| 64歳で離職(65歳の誕生日の前々日まで) | 65歳以降に離職 | |
|---|---|---|
| 受け取る給付 | 基本手当(自己都合:加入10年以上で120日、20年以上で150日/会社都合:最大240日) | 高年齢求職者給付金(最大50日) |
| 日数の差 | 多い | 少ない |
| 年金との関係 | 特別支給の老齢厚生年金の対象者は受給中は年金が停止 | 併給できる |
| 受け取り方 | 4週ごとに分割。認定日ごとに求職活動実績2回 | 一括。認定は1回 |
| 再就職 | 受給中の就職で残りは打ち切り(再就職手当の可能性) | 就職しても返さない |
手続きと必要書類
高年齢求職者給付金に関するよくある質問
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まとめ|65歳以上でも「失業保険」はある。一括・年金併給・返還なし
- ✅ 65歳以上の離職は高年齢求職者給付金。基本手当日額 × 50日(加入1年以上)または30日を一括受給
- ✅ 条件は離職前1年に被保険者期間6か月以上+働く意思と求職活動
- ✅ 自己都合は給付制限1か月。受給期限は離職翌日から1年
- ✅ 老齢年金と併給OK・再就職しても返さない・何度でも受けられる
- ✅ 64歳で辞めると基本手当の日数は多いが、年金停止の有無と給与を含めて比較する
- ✅ 正確な金額は受給資格者証の「基本手当日額」で確認
65歳を過ぎてからの退職は「もう制度の対象外」と諦めてしまう人が本当に多い分野です。離職票を持ってハローワークに行けば、30〜50日分がきちんと受け取れます。
※本記事は大分労働局「高年齢求職者給付金のご案内」(受給要件・30日分/50日分・待期・給付制限・受給期限)、ハローワークインターネットサービス、厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」(2026年8月改定)をもとに2026年9月時点で作成しています。給付率・上限額は毎年8月に改定され、年金との関係は生年月日で異なります。金額の目安は仕組みから算出した概算であり、正確な額はハローワークが決定します。



