退職届は、書く項目が7つしかないとてもシンプルな書類です。それでも「退職願と何が違うのか」「理由は何と書けばいいのか」「封筒はどうするのか」「会社都合なのに退職届を出していいのか」で手が止まる人がとても多い。人事として10年、何百枚もの退職届を受け取り、退職支援の会社で1,000件以上の相談を受けてきた立場から、そのまま書き写せる例文と、人事側が実際に見ているポイントをまとめます。
・退職届の書き方(例文テンプレ・7つの項目・縦書き/横書き)
・紙・ペン・封筒・折り方・封筒への入れ方
・いつまでに出すか(就業規則と民法627条)
・会社都合のときの理由の書き方(「一身上の都合」と書いてはいけないケース)
・受け取ってもらえないとき・郵送するとき・退職代行を使うとき
退職届・退職願・辞表の違い|「撤回できるか」が決定的に違う
| 退職届 | 退職願 | 辞表 | |
|---|---|---|---|
| 意味 | 退職を通知する書類(「辞めます」) | 退職をお願いする書類(「辞めさせてください」) | 役員や公務員が職を辞するときの書類 |
| 撤回 | 会社に届いた時点で効力が生じ、原則撤回できない | 会社(人事権を持つ人)が承諾するまでは撤回できる | — |
| 出す場面 | 退職日が合意済み・退職の意思が固い・会社が受理してくれない | 上司に相談し、合意形成してから正式に出す | 取締役・執行役員・公務員 |
| 会社側の受け止め | 「決定事項」として処理に入る | 「申し出」として相談の余地を残す | — |
一般の会社員が使うのは退職届か退職願です。人事の実務では、就業規則で「退職届」の提出を定めている会社が多く、退職願を出しても「では退職届も出してください」と言われることがあります。迷ったら、上司と退職日まで合意できているなら退職届、まだ相談段階なら退職願と覚えてください。
退職届の書き方|そのまま書き写せる例文
縦書きが慣例ですが、横書きでも法的な効力に違いはありません。会社指定の様式があればそれに従い、なければ次の例文をそのまま使ってください。
7つの項目と書き方
| 項目 | 書き方 | 人事が見ているポイント |
|---|---|---|
| ① 表題 | 1行目中央に「退職届」(または「退職願」) | 「辞表」は役員用。一般社員は使わない |
| ② 私儀(わたくしぎ) | 本文の前、行の一番下(横書きなら右端)に「私儀」または「私事」 | へりくだる表現。省略しても無効にはならない |
| ③ 退職理由 | 自己都合は「一身上の都合により」で統一。具体的な理由は書かない | 会社都合の場合は書き方が変わる(後述) |
| ④ 退職日 | 上司と合意した退職日を和暦または西暦で。会社の書類に合わせる | 最終出社日ではなく、雇用契約が終わる日 |
| ⑤ 提出日 | 実際に提出する日 | 退職日より前であること。空欄にしない |
| ⑥ 所属・氏名・押印 | 正式な部署名とフルネーム。押印は認印(シャチハタは避ける) | 押印の法的義務はないが、慣例として押す会社が多い |
| ⑦ 宛名 | 会社の最高責任者(代表取締役社長 氏名 殿)。直属の上司ではない | 敬称は「殿」または「様」。宛名は本文より下に書く |
紙・ペン・封筒・折り方|迷いやすい形式のルール
| 項目 | 基本 | 補足 |
|---|---|---|
| 紙 | 白無地のB5またはA4。薄い罫線入りの便箋でも可 | コピー用紙でも無効にはならないが、便箋のほうが印象がよい |
| 筆記具 | 黒のボールペンまたは万年筆 | 消せるボールペン・鉛筆は不可。パソコン作成も可(署名は手書きが望ましい) |
| 縦書き/横書き | 縦書きが慣例。会社の様式が横書きならそれに従う | 効力に差はない |
| 封筒 | 白無地・郵便番号枠なし。B5なら長形4号、A4なら長形3号 | 茶封筒は事務用なので避ける |
| 封筒の表 | 中央に「退職届」(または「退職願」) | 手渡しなら宛名は不要 |
| 封筒の裏 | 左下に所属と氏名 | 糊付けした場合は封じ目に「〆」。手渡しなら糊付け不要 |
| 折り方 | 三つ折り。用紙の下から1/3を折り上げ、上1/3を折り下げる | 開いたときに書き出しが右上に来るように |
| 封筒への入れ方 | 書き出し(右上)が封筒の裏側の右上に来る向きで入れる | 受け取った人が取り出して開いたときに、すぐ読める向き |
いつまでに出す?|就業規則の「1か月前」と民法の「2週間」
| ルール | 内容 | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 民法627条1項 | 期間の定めのない雇用(正社員など)は、退職の申入れから2週間で終了する | 法律上はこれで辞められる。就業規則より優先されるという見方が一般的 |
| 就業規則 | 「退職の1か月前までに届け出る」など会社ごとに規定 | 円満退職・引き継ぎのため、できる限り就業規則に従うのが無難 |
| 契約社員など期間の定めがある場合 | 原則として契約期間の途中では辞められない(やむを得ない事由があれば可) | 1年を超える契約は1年経過後なら申し出で退職できる(労働基準法附則137条) |
おすすめの順番は、①上司に口頭で伝える(就業規則の期限より前に)→②退職日を合意→③退職届を提出です。退職届を先に出すと「聞いていない」ともめる原因になります。逆に、口頭で伝えても取り合ってもらえないときは、退職届を出して「いつ伝えたか」の証拠にします。
会社都合のときの書き方|「一身上の都合」と書いてはいけない
ここが一番大事なポイントです。退職勧奨・解雇・事業所閉鎖・賃金未払い・ハラスメントなど会社都合で辞めるのに「一身上の都合により」と書いてしまうと、自己都合退職の証拠になりかねません。失業保険の給付制限(原則1か月)や給付日数に直結します。
| 状況 | 退職届はどうする | 理由欄の書き方 |
|---|---|---|
| 退職勧奨に応じて辞める | 会社から求められたら提出する | 「貴社からの退職勧奨に伴い」「貴社の勧奨に応じ」 |
| 解雇 | 出さない。解雇は会社の一方的な通知であり、本人が届を出す必要はない | 解雇通知書・解雇理由証明書を会社に請求する |
| 事業所の閉鎖・倒産 | 会社から求められたら提出 | 「事業所閉鎖に伴い」 |
| ハラスメント・長時間労働・賃金未払いで辞める | 提出はするが理由は事実を書くか、理由欄を空欄にして離職票で異議を出す | 「職場環境の改善が見込めないため」など、事実に基づく表現 |
受け取ってもらえない・郵送する・退職代行を使うとき
上司が受け取らない場合
退職届の受け取りを拒否されても、退職の意思表示が会社に「到達」すれば効力は生じます。受け取らない上司を飛ばして、人事部や社長宛てに提出して構いません。それも難しければ次の郵送です。
郵送する場合
退職代行を使う場合
退職代行は「退職の意思を会社に伝える」サービスなので、退職届そのものは本人が書いて、会社に郵送するのが一般的です。多くの業者はテンプレートを用意しており、書き方も指示してくれます。会社と直接やりとりしなくてよいので、書類は郵送、私物と貸与品も郵送でやりとりします。
退職届に関するよくある質問
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まとめ|退職届は「いつ辞めるか」だけを書く書類
- ✅ 退職届=通知(撤回不可)/退職願=お願い(承諾前は撤回可)。合意済みなら退職届
- ✅ 書くのは表題・私儀・理由・退職日・提出日・所属氏名・宛名の7項目。自己都合は「一身上の都合により」
- ✅ 紙は白無地B5/A4、黒ボールペン、白封筒(長形4号/3号)、三つ折り
- ✅ 口頭で伝える→退職日を合意→退職届の順。就業規則の期限に従い、法律上は2週間
- ✅ 会社都合なら「一身上の都合」と書かない。解雇なら退職届は出さない
- ✅ 受け取ってもらえなければ人事・社長宛て、または内容証明で郵送。退職代行なら本人が書いて郵送
退職届は書き方より、「何を理由欄に書くか」と「いつ出すか」で結果が変わる書類です。ここだけ間違えなければ、あとは例文どおりで問題ありません。
※本記事は民法627条・労働基準法附則137条の条文と、著者の人事・労務実務(退職届の受理・離職票作成)をもとに2026年9月時点で作成しています。就業規則の内容・退職願の撤回が認められる時点は会社や事案ごとに異なります。会社都合か自己都合かの最終判定はハローワークが行います。



