パワハラで、もう限界。辞めると決めた。でも「自己都合で辞めたら失業保険まで1か月待たされる」「パワハラなら会社都合にできるって聞いたけど、会社が認めるはずがない」——そこで止まってしまっているなら、この記事を読んでから動いてください。
結論から言うと、パワハラが原因の退職は「特定受給資格者」=会社都合と同じ扱いになりうる制度です。そして会社に認めてもらう必要はありません。判定するのはハローワークです。人事として離職票を書いていた側の経験から言うと、会社は「自己都合」と書いてきます。でも、そこから覆す手順があります。
この記事では、退職届の書き方 → 会社への伝え方 → 離職票のチェック → ハローワークでの申告 → 受け取れるお金の最大化まで、これから辞める人が「順番どおりにやれば損しない」形で整理します。「証拠がない」場合の考え方と判断基準の原文は、別記事で詳しく書いています。
- パワハラ退職が「会社都合(特定受給資格者)」になる条件と、自己都合との差額
- 退職届に「一身上の都合」と書いてはいけない理由と、書き方の例文
- 辞める前に残す証拠7つ(在職中だからできること)
- 離職票が「自己都合」で来たときの対抗手順(異議・申告・審査請求)
- 失業保険・傷病手当金・国保軽減・再就職手当——パワハラ退職後のお金を最大化する順番
パワハラ退職は「会社都合」になる|特定受給資格者の条件と、自己都合との差
失業保険(雇用保険の基本手当)には「自己都合」「会社都合」という言葉のほかに、法律上の区分として特定受給資格者があります。解雇・倒産だけでなく、「上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者」も、この特定受給資格者に含まれます(ハローワーク「特定受給資格者の範囲」Ⅱ(9))。
| 自己都合(一般) | 特定受給資格者(パワハラ等) | |
|---|---|---|
| 給付制限 | 原則1か月 | なし |
| 受給要件 | 離職前2年間に12か月以上 | 離職前1年間に6か月以上でも可 |
| 給付日数 | 90〜150日 | 90〜330日(年齢・加入期間で決まる) |
| 国民健康保険料 | 通常 | 前年所得を30%として計算する軽減 |
| 初回振込の目安 | 約2か月後 | 約1か月後 |
ケース別|この状況は「会社都合(特定受給資格者)」になりうる?
面談で聞いてきた相談を、判断基準に照らして整理します。あくまで傾向で、最終判断はハローワークですが、「自分のケースは動く価値があるか」の目安にしてください。
| 状況 | 見立て | 効く資料 |
|---|---|---|
| 人前で毎日のように怒鳴られる・人格否定される | 該当しうる(故意・繰り返し) | 日付入り記録・録音・目撃者 |
| 無視される・仕事を与えられない・会議に呼ばれない | 該当しうる(故意の排斥) | メール履歴・業務指示の記録・日記 |
| あなただけ減給・降格・遠隔地へ配転 | 該当しうる(著しい冷遇)。判断基準に持参資料として明記 | 辞令・賃金台帳・給与明細 |
| 「辞めろ」「次の仕事を探せ」と繰り返し言われる | 退職勧奨として別項目でも該当しうる | 発言の日時・録音・メール |
| 1回だけ強く叱責された | 該当しにくい(通常の注意・叱責) | — |
| ミスを注意されたが、言い方がきつかった | 該当しにくい | — |
| セクハラを相談したのに会社が動かなかった | 該当(概ね1か月経過後も改善措置なし) | 相談メール・日付 |
| パワハラで心身を壊し、診断書がある | 会社都合が認められなくても特定理由離職者(給付制限なし)の可能性 | 診断書・受診記録 |
退職届に「一身上の都合」と書かない|パワハラ退職の退職届・伝え方
ここが、いちばん多くの人が損をしているポイントです。退職届に「一身上の都合により」と書くと、会社は堂々と「自己都合」で離職票を作れます。あとから「本当はパワハラだった」と言っても、「本人が一身上の都合と書いている」と反論されます。
退職届の書き方(例文)
私は、上司○○氏による継続的な暴言・人格否定等のハラスメントにより就業の継続が困難となったため、○年○月○日をもって退職いたします。
なお、本退職は上記ハラスメントを原因とするものであり、自己都合退職ではありません。
○年○月○日 所属 氏名 印
| 理由を書く義務はある? | ない。ただし書かないと「一身上の都合」と同じ扱いになりやすいので、パワハラ退職では書いたほうがいい |
| 「退職願」と「退職届」 | 退職願=お願い(撤回可)。退職届=一方的な意思表示(原則撤回不可)。パワハラ退職は「退職届」で |
| 提出方法 | 手渡しが基本。受け取りを拒否されたら内容証明郵便で送る(送った事実と内容が証明される) |
| 控え | 必ずコピーを取る。写真でもよい。ハローワークでの資料になる |
| 会社所定の「退職届フォーマット」に一身上の都合と印字されている | その欄を二重線で消して事実を書くか、別紙で理由書を添付する |
口頭・メールで伝えるときの言い方
「体調が悪くて」「家庭の事情で」と、その場を穏便に済ませる言い方をしがちですが、それが会社側の「自己都合」の根拠になります。言いにくければ、メールで構いません。メールは送信記録が残るので、むしろ有利です。
○○部長
お疲れ様です。○○です。
○月以降、○○氏からの継続的な叱責・人格否定により体調を崩し、心療内科で適応障害と診断されました。人事にも○月○日に相談しましたが改善に至らず、就業の継続が困難と判断し、○月○日をもって退職いたします。
本退職はハラスメントを原因とするものであることを、離職票の離職理由に反映いただくようお願いいたします。
辞める前に残す証拠7つ|在職中だからできること
退職後に取れなくなるものがあります。会社のPC・社内チャット・タイムカード。辞める前の1〜2週間で、次の7つをできる範囲で。
自分が受けている会話を録音することは、一般に違法ではない。日時が自動で残るのも強み
いつ・どこで・誰が・何を・誰が見ていたか。過去の分も思い出せる範囲で日付をつける。「繰り返し」の裏づけになる
人格否定・深夜の連絡・無理な指示。会社PCは退職後に使えないので私物スマホで撮影(業務上の秘密は写さない)
「あの日のこと見てたよ」のLINEでも材料になる
心療内科・内科。「業務上のストレスが原因」と書いてもらえるか相談。傷病手当金の要件にもつながる
長時間労働・あなただけの減給・不当な配置転換の辞令は、判断基準に例示された持参資料
人事への相談メール、労働局の総合労働相談コーナーの相談日。「申し出たのに改善されなかった」流れを示す
離職票が「自己都合」で届いたら|ハローワークで覆す手順
退職届にパワハラと書いても、会社は「自己都合」で離職証明書を出すことがあります。人事側の本音を言えば、パワハラを認める記載は会社にとってリスクなので、避けたがります。でもそれで確定ではありません。
会社が記入した欄を見る。「労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合)」になっていたら次へ
「上司○○から○年○月より継続的に人格否定を受け、○月に心療内科受診(適応障害)。○月○日人事に相談したが改善なく退職」。書ききれなければ別紙添付
退職届の控え・メール・診断書・日記・相談記録。窓口で「特定受給資格者に該当するか判断してください」と明確に伝える
数日〜数週間。この間に求職申込みは済ませておく(受給期間は離職翌日から1年で動いている)
①「心身の不調による特定理由離職者」として再度判断を求める(診断書が中心)②決定に不服なら雇用保険審査官へ審査請求(期限あり・窓口で確認)
パワハラで言い出せない・出社できない|退職代行を使うなら「交渉できる型」を
「上司の顔を見るだけで動悸がする」「退職届を渡しに行くのが無理」——その状態なら、退職の連絡を代わりに行う退職代行を使ってください。ただし、パワハラ退職では運営元で選んでください。
| 運営元 | できること | パワハラ退職での向き不向き |
|---|---|---|
| 民間業者 | 退職の意思を「伝える」のみ | △ 離職理由の交渉はできない |
| 労働組合 | 団体交渉として、退職日・有給消化・離職理由(会社都合扱いの要求)の交渉 | ○ 多くのケースで十分 |
| 弁護士 | 上記に加え、損害賠償請求・未払い残業代・法的な争いへの対応 | ◎ 慰謝料まで求めたい/会社が強硬 |
面談で紹介してきた中では、パワハラ案件で「損害賠償を請求する」と脅されている場合や、未払い残業代がある場合は弁護士運営を、離職理由の交渉と有給消化で十分なら労働組合運営を勧めてきました。
パワハラ退職後のお金を最大化する順番|失業保険だけで終わらせない
特定受給資格者になれば失業保険は有利になりますが、それだけではありません。順番を守ると、受け取れる総額はさらに変わります。
在職中に連続3日以上休み、4日目以降も働けなければ傷病手当金(標準報酬日額の2/3・最長通算1年6か月)。退職日までに受給要件を満たせば退職後も継続
失業保険は働ける人向け。働けない間は傷病手当金、回復後に失業保険。延長申請を忘れると1年で権利が消える
上の手順で異議・申告。認められれば給付制限なし・日数増
特定受給資格者・特定理由離職者は、前年所得を30%として保険料を計算する軽減の対象。市区町村の窓口で離職票(受給資格者証)を提示
失業を理由とした特例免除がある。退職後の収入がなければ申請を
支給残日数が3分の1以上残っていれば、残りの60〜70%が一時金に。「早く決まると損」ではない
「傷病手当金・延長・区分の異議・国保・年金、全部やるのは今の自分には無理」——そう感じたら、退職後の手続きを一緒に整理してくれる給付金サポートに無料相談だけしてみてください。手続きは自分でもできるので、料金と対応範囲を確認してから決めるのが安全です。
よくある質問
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まとめ|退職届に「パワハラ」と書く。それが最初の一歩
パワハラ退職は、特定受給資格者として会社都合と同じ扱いになりうる制度です。会社の承認は要りません。退職届に理由を書く → 記録を残す → 離職票で異議 → ハローワークに資料を出す。この順番で、給付制限なし・給付日数増・国保軽減がついてきます。
働けないほど疲れているなら、失業保険より先に傷病手当金と受給期間延長。順番を守れば、お金は守れます。言い出せないなら、労組か弁護士の退職代行に交渉を任せてください。
あなたが辞めるのは、逃げではありません。パワハラを放置した職場から、自分を守るための正当な退職です。証拠を残して、泣き寝入りしないでください。
※本記事は2026年9月時点で、厚生労働省・ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」ほか公表情報をもとに作成しています。離職理由の区分・給付日数・給付制限・保険料軽減の適用は、提出資料と管轄ハローワーク・市区町村の判断で決まります。損害賠償請求など法的な争いは弁護士にご相談ください。当サイトはアフィリエイト広告を掲載していますが、報酬の有無で内容を変えていません。




