「退職代行を使って後悔した」「トラブルになった」という話を見て、申し込む手が止まっていませんか。
先に言っておくと、退職代行のトラブルの大半は「業者の運営元の選び間違い」か「本人がやるべき最低限のことをしなかった」のどちらかで起きています。退職代行そのものが危ないのではなく、起きるパターンが決まっているので、事前に知っていれば避けられます。
私は人事・労務として10年、退職代行から連絡を受ける側にいました。そのあと退職支援の会社で1,000件以上の退職相談を受け、「うまくいった人」と「もめた人」の違いを見てきました。この記事では実際に起きるトラブルを事例別に、原因と回避策つきで整理します。
・人事側から見た「会社がもめるケース」の正体
・後悔した人に共通する3つのこと
・トラブルを避ける業者選びのチェックリスト
・それでも起きてしまったときの対処
退職代行で実際に起きるトラブル8つ|原因と回避策
① 会社が「本人と直接話す」と言って受け付けない
民間業者からの連絡に対して、会社が「代理人とは話さない。本人から連絡させろ」と押し返すケース。民間業者は交渉権限がないため、ここで止まります。
② 会社から本人に電話・訪問が来る
業者が「本人への連絡は控えてください」と伝えても、上司や同僚から電話・LINE・自宅訪問が来ることがあります。出る義務はありませんが、精神的にはきつい。
③ 有給が消化できなかった・退職日が希望と違った
「有給を全部使って辞めたい」と伝えたのに、会社が「業務の引き継ぎがあるので認めない」と返し、民間業者は交渉できず、結局欠勤扱いや希望より早い退職日になるケース。
④ 業者と連絡が取れない・対応が遅い
申し込み後にLINEの返信が半日以上来ない、会社への連絡日時がずれた、というケース。安さだけで選んだ小規模業者や、深夜・休日は受付だけの業者で起きやすい。
⑤ 追加料金を請求された
「基本料金のほかに組合費」「会社との連絡が長引いたので追加」「離職票の催促は別料金」など。
⑥ 離職票・源泉徴収票が届かない
退職後、会社が書類の発送を後回しにする(嫌がらせで遅らせる会社もある)。離職票が届かないと失業保険の手続きが始められません。
⑦ 「損害賠償を請求する」「懲戒解雇にする」と脅された
人手不足の職場や、引き継ぎがない状態で辞めると、会社が感情的にこう言ってくることがあります。
⑧ 業者が非弁行為で問題になり、手続きが止まった
民間業者が交渉や弁護士紹介に踏み込んで、法律上の問題になるケース。2025年10月には大手業者の運営会社が弁護士法違反の疑いで家宅捜索を受けました。利用者が罰せられることはありませんが、依頼中の手続きが混乱するおそれはあります。
人事側から見た「会社がもめるケース」の正体
人事として退職代行の連絡を受けたとき、会社がすんなり受け入れるか、もめるかは、実は本人の辞め方より「連絡の中身」で決まっていました。
| 会社がすんなり受け入れた連絡 | 会社がもめた連絡 |
|---|---|
| 退職日・有給消化の希望・貸与品の返却方法・書類の送付先が最初の連絡で全部そろっている | 「本日から出社しません」だけで、退職日も返却方法も分からない |
| 労働組合または弁護士からの連絡(会社側も「対応するしかない」と判断) | 運営元がはっきりしない民間業者で、人事が「これは誰と話しているのか」と不信感を持つ |
| 引き継ぎメモ(数行でも)が本人から郵送・メールで届いている | 業務の引き継ぎが一切なく、現場が混乱して感情的になる |
| 貸与品が翌日〜数日で返送されてくる | PC・鍵・社員証が返ってこず、会社が「返還請求」を口実に連絡してくる |
退職代行で後悔した人に共通する3つのこと
| 後悔のパターン | 中身 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 「もっと早く使えばよかった」 | 体を壊してから使った。有給も残っていなかった | 「辞めたい」と思った時点で無料相談だけしておく。使うかどうかは後で決めればいい |
| 「安さで選んで失敗した」 | 民間の最安業者で有給が取れず、結局自分で会社と話した | 有給・退職日の希望があるなら労働組合か弁護士。差額は数千円 |
| 「退職後の手続きを何も知らなかった」 | 離職票・国保・年金・失業保険の順番が分からず、給付が遅れた | 退職代行の申込みと同時に、退職後の手続きと給付金を調べておく |
トラブルを避ける業者選びチェックリスト
- ✅ 運営元(会社名・組合名・弁護士法人名)と所在地・電話番号が公式サイトに明記されている
- ✅ 有給・退職日の希望があるなら労働組合か弁護士法人
- ✅ 総額(組合費・後払い手数料込み)が文字で分かる。追加料金の条件が書いてある
- ✅ 無料相談の返信が早い(目安:営業時間内なら1時間以内)
- ✅ 返金保証の条件が書いてある(「退職できなかった場合」の定義)
- ✅ 離職票・書類の受け取りまで対応範囲に含まれている
- ✅ 「弁護士を紹介します」という民間業者は紹介料の有無を確認(不明なら避ける)
それでもトラブルになったときの対処
退職代行のトラブルに関するよくある質問
あわせて読みたい
まとめ|トラブルは「運営元の選び方」と「本人がやる3つのこと」でほぼ防げる
- ✅ 会社がもめる原因は、民間業者に交渉が必要な依頼をしたとき
- ✅ 有給・退職日の希望があるなら労働組合か弁護士法人
- ✅ 本人がやるのは貸与品の返却・数行の引き継ぎメモ・書類送付先の指定
- ✅ 脅しは労基法16条で対抗できる。書面が来たら弁護士へ
- ✅ 業者が止まっても、退職届の内容証明で退職は成立する
人事側にいた経験から言うと、退職代行でこじれた案件は「本人が悪かった」ことより「連絡の中身が足りなかった」ことがほとんどでした。運営元を選び、3つのことをやれば、退職代行は静かに終わります。



