「懲戒解雇されたら失業保険はもらえないのでは」——そう思い込んで、ハローワークにも行かずに生活費だけが減っていく方を何人も見てきました。
先に答えます。懲戒解雇でも失業保険(基本手当)はもらえます。ただし、ハローワークが「重責解雇」と判定すると給付制限が3か月つき、給付日数も自己都合退職と同じ扱いになります。逆に、会社が「懲戒」と書いていても重責解雇と認められなければ、普通の解雇として給付制限なし・給付日数も多い「特定受給資格者」になります。
人事・労務として懲戒処分の手続きと離職票の作成を担当し、退職支援の会社で1,000件以上の相談を受けてきた立場から、もらえる条件・いつから・いくら・重責解雇の判定・離職票への異議・転職での伝え方を整理します。
・「懲戒解雇」と「重責解雇」は別物——判定するのはハローワーク
・いつからもらえるか(待期7日+給付制限3か月)と金額・日数
・離職票の離職理由に納得できないときの異議の出し方
・不当解雇として争う場合の選択肢
・転職活動での伝え方、退職金・解雇予告手当の扱い
結論|懲戒解雇でも失業保険はもらえる。差が出るのは「給付制限」と「日数」
失業保険の受給要件は「離職前に雇用保険の被保険者期間が一定以上あること」と「働く意思と能力があり、求職活動をしていること」です。解雇の理由は受給要件に含まれていません。懲戒解雇であっても、受給資格そのものはあります。
| ハローワークの判定 | 受給資格の区分 | 給付制限 | 給付日数 | 必要な被保険者期間 |
|---|---|---|---|---|
| 普通解雇・整理解雇(会社都合) | 特定受給資格者 | なし(待期7日のあと受給開始) | 年齢と加入期間で90〜330日 | 離職前1年に6か月以上 |
| 懲戒解雇だが重責解雇とは認められない | 特定受給資格者 | なし | 90〜330日 | 離職前1年に6か月以上 |
| 重責解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由) | 一般受給資格者(自己都合と同じ) | 3か月 | 加入期間で90〜150日 | 離職前2年に12か月以上 |
「懲戒解雇」と「重責解雇」は別物|判定するのはハローワーク
会社が就業規則に基づいて行う処分の名前が「懲戒解雇」、雇用保険で給付制限の対象になる区分が「重責解雇」です。会社が離職票に「懲戒解雇」と書いても、それをそのまま重責解雇と認めるかどうかはハローワークが決めます。就業規則違反の事実や解雇に至った経緯を、会社の主張と本人の主張の両方から確認したうえで判定します。
重責解雇と判定されやすい行為の例
| 行為 | 補足 |
|---|---|
| 刑法に触れる行為(横領・窃盗・傷害など)で解雇された | 会社の金品への横領などは典型例 |
| 故意または重大な過失で、会社の設備・器具を壊した | 「うっかり」では該当しない。重大な過失かどうかが争点 |
| 会社の信用を著しく失わせる行為(重大な情報漏えい・秘密の漏えいなど) | 外部への影響の大きさで判断 |
| 正当な理由のない無断欠勤が2週間以上続き、出勤の督促にも応じなかった | 連絡がつかないまま解雇された場合に多い |
| 就業規則の重大な違反で、事前に注意・警告を受けていたのに繰り返した | 「警告があったか」が重要 |
重責解雇と判定されにくいケース
- ✅ 会社が「懲戒解雇」と言っているが、就業規則に該当する規定がない/手続き(弁明の機会など)を踏んでいない
- ✅ 能力不足・成績不良・人間関係を理由にした解雇(これは普通解雇の領域)
- ✅ 欠勤が病気・けが・ハラスメントによるもので、会社に事情を伝えていた
- ✅ 解雇の理由が本人の主張と大きく食い違う(証拠を持ってハローワークに説明できる)
いつからもらえる?いくら?重責解雇の場合のスケジュール
| 時期 | 重責解雇と判定された場合 | 普通解雇(特定受給資格者)の場合 |
|---|---|---|
| 離職票を持ってハローワークへ | 受給資格決定 | 受給資格決定 |
| 待期7日 | 共通 | 共通 |
| 給付制限 | 3か月(この間は支給なし) | なし |
| 初回の振込 | 離職から約4か月後 | 離職から約1か月後 |
| 給付日数 | 加入1〜10年未満 90日/10〜20年未満 120日/20年以上 150日 | 年齢×加入期間で90〜330日 |
金額(基本手当日額)は解雇の理由で変わりません。離職前6か月の賃金÷180×50〜80%(年齢・賃金による上限あり)で、受給資格者証で確認できます。
離職票の離職理由に納得できないとき|異議の出し方
不当解雇として争う選択肢|懲戒解雇は簡単には認められない
懲戒解雇は「解雇の中でもっとも重い処分」で、就業規則に根拠があり、行為の重大さに見合い、手続きが適正でなければ無効と判断されやすい処分です(労働契約法15条・16条)。
| 方法 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 会社との交渉(本人・労働組合・弁護士) | 懲戒解雇の撤回、普通解雇や退職勧奨への切り替え、退職金の支給を求める | まず穏便に条件を変えたい人 |
| 労働局のあっせん | 無料。第三者が間に入って話し合い。強制力はない | 弁護士費用をかけずに解決したい人 |
| 労働審判 | 裁判所で原則3回以内の期日で解決。解決金での和解が多い | 早く・確実に決着させたい人 |
| 訴訟 | 解雇無効・地位確認・未払い賃金の請求 | 徹底的に争う人 |
争う場合でも、失業保険の手続きは先に進めてください。解雇が無効と認められた場合は受け取った基本手当を返す扱いになりますが、争っている間の生活費を止める必要はありません。
転職・退職金・解雇予告手当|懲戒解雇のあとに気になること
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 転職先に懲戒解雇はばれる? | 離職票・源泉徴収票に解雇の種類は書かれない。前職への照会は本人の同意なしには通常行われない。ただし面接で「退職理由」を聞かれたら嘘をつかず、事実と改善を簡潔に伝える。経歴詐称は内定取消の理由になり得る |
| 退職金 | 就業規則に「懲戒解雇の場合は不支給・減額」の規定があれば減額され得る。ただし全額不支給が認められるのは、それまでの功労を消すほどの重大な背信行為がある場合に限られる(裁判例)。規定と行為の重さを確認 |
| 解雇予告手当 | 解雇は30日前の予告か30日分の平均賃金の支払いが原則(労基法20条)。懲戒解雇でも、労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受けていなければ予告手当は必要 |
| 有給の残り | 解雇日までに消化できなかった有給は原則消滅。買取は会社の任意 |
| 離職票・源泉徴収票 | 会社は解雇でも交付義務がある。届かなければハローワーク・税務署に相談 |
懲戒解雇と失業保険に関するよくある質問
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まとめ|懲戒解雇でも受給できる。会社の書いた理由をそのまま受け入れない
- ✅ 懲戒解雇でも失業保険はもらえる。解雇理由は受給要件ではない
- ✅ 差が出るのは重責解雇と判定されるか。判定するのは会社ではなくハローワーク
- ✅ 重責解雇なら給付制限3か月・給付日数90〜150日。認められなければ給付制限なし・最大330日
- ✅ 離職票の離職者記入欄で異議を出し、解雇理由証明書と証拠で説明する
- ✅ 不当解雇を争う場合も、失業保険の手続きは先に進める
- ✅ 転職先に解雇の種類は自動では伝わらない。面接では事実を簡潔に
懲戒解雇は本人にとって最も重い出来事ですが、生活と再出発の権利まで奪われるものではありません。まず離職票を持ってハローワークへ行き、あなたの側の事情を伝えるところから始めてください。
※本記事は岩手労働局「給付制限期間の短縮」の案内(重責解雇は3か月)、離職区分の判定に関する社会保険労務士の解説、労働基準法20条・22条、労働契約法15条・16条をもとに2026年9月時点で作成しています。重責解雇の判定は個別の事情によりハローワークが行い、解雇の有効性の判断は最終的に裁判所が行います。個別の事案は弁護士・社会保険労務士にご相談ください。



