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法律・権利

懲戒解雇でも失業保険はもらえる?いつから・いくら・重責解雇の判定と異議の出し方を元人事が解説

懲戒解雇と失業保険|もらえる条件・いつから・重責解雇の判定

「懲戒解雇されたら失業保険はもらえないのでは」——そう思い込んで、ハローワークにも行かずに生活費だけが減っていく方を何人も見てきました。

先に答えます。懲戒解雇でも失業保険(基本手当)はもらえます。ただし、ハローワークが「重責解雇」と判定すると給付制限が3か月つき、給付日数も自己都合退職と同じ扱いになります。逆に、会社が「懲戒」と書いていても重責解雇と認められなければ、普通の解雇として給付制限なし・給付日数も多い「特定受給資格者」になります。

人事・労務として懲戒処分の手続きと離職票の作成を担当し、退職支援の会社で1,000件以上の相談を受けてきた立場から、もらえる条件・いつから・いくら・重責解雇の判定・離職票への異議・転職での伝え方を整理します。

💡 この記事でわかること
・懲戒解雇でも失業保険がもらえる根拠
・「懲戒解雇」と「重責解雇」は別物——判定するのはハローワーク
・いつからもらえるか(待期7日+給付制限3か月)と金額・日数
・離職票の離職理由に納得できないときの異議の出し方
・不当解雇として争う場合の選択肢
・転職活動での伝え方、退職金・解雇予告手当の扱い

結論|懲戒解雇でも失業保険はもらえる。差が出るのは「給付制限」と「日数」

失業保険の受給要件は「離職前に雇用保険の被保険者期間が一定以上あること」と「働く意思と能力があり、求職活動をしていること」です。解雇の理由は受給要件に含まれていません。懲戒解雇であっても、受給資格そのものはあります。

ハローワークの判定 受給資格の区分 給付制限 給付日数 必要な被保険者期間
普通解雇・整理解雇(会社都合) 特定受給資格者 なし(待期7日のあと受給開始) 年齢と加入期間で90〜330日 離職前1年に6か月以上
懲戒解雇だが重責解雇とは認められない 特定受給資格者 なし 90〜330日 離職前1年に6か月以上
重責解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由) 一般受給資格者(自己都合と同じ) 3か月 加入期間で90〜150日 離職前2年に12か月以上
⚠ 2025年改正後も3か月
2025年4月の改正で自己都合退職の給付制限は原則1か月に短縮されましたが、重責解雇の給付制限は3か月のままです(岩手労働局の案内で確認)。「自己都合より不利」になる唯一のケースなので、次の「重責解雇にあたるか」が最大の分かれ目です。

「懲戒解雇」と「重責解雇」は別物|判定するのはハローワーク

会社が就業規則に基づいて行う処分の名前が「懲戒解雇」、雇用保険で給付制限の対象になる区分が「重責解雇」です。会社が離職票に「懲戒解雇」と書いても、それをそのまま重責解雇と認めるかどうかはハローワークが決めます。就業規則違反の事実や解雇に至った経緯を、会社の主張と本人の主張の両方から確認したうえで判定します。

重責解雇と判定されやすい行為の例

行為 補足
刑法に触れる行為(横領・窃盗・傷害など)で解雇された 会社の金品への横領などは典型例
故意または重大な過失で、会社の設備・器具を壊した 「うっかり」では該当しない。重大な過失かどうかが争点
会社の信用を著しく失わせる行為(重大な情報漏えい・秘密の漏えいなど) 外部への影響の大きさで判断
正当な理由のない無断欠勤が2週間以上続き、出勤の督促にも応じなかった 連絡がつかないまま解雇された場合に多い
就業規則の重大な違反で、事前に注意・警告を受けていたのに繰り返した 「警告があったか」が重要

重責解雇と判定されにくいケース

  • ✅ 会社が「懲戒解雇」と言っているが、就業規則に該当する規定がない/手続き(弁明の機会など)を踏んでいない
  • 能力不足・成績不良・人間関係を理由にした解雇(これは普通解雇の領域)
  • ✅ 欠勤が病気・けが・ハラスメントによるもので、会社に事情を伝えていた
  • ✅ 解雇の理由が本人の主張と大きく食い違う(証拠を持ってハローワークに説明できる)
💡 元人事の実感
人事側として言うと、会社は「懲戒解雇」を安易に使いがちですが、雇用保険の重責解雇の基準はかなり厳しく、「懲戒解雇」と書かれた離職票の相当数が、ハローワークでは重責解雇と認められていません。会社の書いた理由をそのまま受け入れず、必ず自分の言い分を伝えてください。

いつからもらえる?いくら?重責解雇の場合のスケジュール

時期 重責解雇と判定された場合 普通解雇(特定受給資格者)の場合
離職票を持ってハローワークへ 受給資格決定 受給資格決定
待期7日 共通 共通
給付制限 3か月(この間は支給なし) なし
初回の振込 離職から約4か月後 離職から約1か月後
給付日数 加入1〜10年未満 90日/10〜20年未満 120日/20年以上 150日 年齢×加入期間で90〜330日

金額(基本手当日額)は解雇の理由で変わりません。離職前6か月の賃金÷180×50〜80%(年齢・賃金による上限あり)で、受給資格者証で確認できます。

⚠ 3か月の空白をどう乗り切るか
給付制限3か月のあいだ収入がゼロになる人は、国民健康保険の軽減(重責解雇は対象外のことが多い・要確認)や国民年金の免除、生活福祉資金の貸付などを市区町村で相談してください。給付制限中もハローワークの求職活動実績は必要です。

離職票の離職理由に納得できないとき|異議の出し方

1
離職票−2の「離職理由」欄を確認する
会社が記入した理由(事業主記入欄)と、本人が記入する欄がある。会社の記載に「懲戒解雇」「重責解雇」とあっても、そのまま署名しない。
2
離職者記入欄で「異議あり」にチェックし、自分の認識する理由を書く
「無断欠勤ではなく病気で連絡していた」「就業規則の規定に該当しない」など事実を簡潔に。
3
証拠を持ってハローワークの窓口で説明する
解雇通知書・解雇理由証明書・会社とのメール・診断書・就業規則の該当部分など。ハローワークが会社に照会して判定する。
4
判定結果に不服なら
雇用保険審査官への審査請求ができる。並行して、解雇自体を争うなら次の章へ。
💡 解雇理由証明書を必ず請求
会社は労働者から請求があれば解雇理由証明書を交付する義務があります(労働基準法22条)。「なぜ解雇なのか」を会社に書面で出させることが、ハローワークでの判定でも、不当解雇を争う場合でも最初の一手です。

不当解雇として争う選択肢|懲戒解雇は簡単には認められない

懲戒解雇は「解雇の中でもっとも重い処分」で、就業規則に根拠があり、行為の重大さに見合い、手続きが適正でなければ無効と判断されやすい処分です(労働契約法15条・16条)。

方法 内容 向いている人
会社との交渉(本人・労働組合・弁護士) 懲戒解雇の撤回、普通解雇や退職勧奨への切り替え、退職金の支給を求める まず穏便に条件を変えたい人
労働局のあっせん 無料。第三者が間に入って話し合い。強制力はない 弁護士費用をかけずに解決したい人
労働審判 裁判所で原則3回以内の期日で解決。解決金での和解が多い 早く・確実に決着させたい人
訴訟 解雇無効・地位確認・未払い賃金の請求 徹底的に争う人

争う場合でも、失業保険の手続きは先に進めてください。解雇が無効と認められた場合は受け取った基本手当を返す扱いになりますが、争っている間の生活費を止める必要はありません。

転職・退職金・解雇予告手当|懲戒解雇のあとに気になること

項目 扱い
転職先に懲戒解雇はばれる? 離職票・源泉徴収票に解雇の種類は書かれない。前職への照会は本人の同意なしには通常行われない。ただし面接で「退職理由」を聞かれたら嘘をつかず、事実と改善を簡潔に伝える。経歴詐称は内定取消の理由になり得る
退職金 就業規則に「懲戒解雇の場合は不支給・減額」の規定があれば減額され得る。ただし全額不支給が認められるのは、それまでの功労を消すほどの重大な背信行為がある場合に限られる(裁判例)。規定と行為の重さを確認
解雇予告手当 解雇は30日前の予告か30日分の平均賃金の支払いが原則(労基法20条)。懲戒解雇でも、労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受けていなければ予告手当は必要
有給の残り 解雇日までに消化できなかった有給は原則消滅。買取は会社の任意
離職票・源泉徴収票 会社は解雇でも交付義務がある。届かなければハローワーク・税務署に相談

懲戒解雇と失業保険に関するよくある質問

Q. 懲戒解雇されたら失業保険はもらえませんか?
A. もらえます。解雇の理由は受給要件ではありません。ハローワークが重責解雇と判定した場合は給付制限3か月と自己都合と同じ給付日数になり、判定されなければ普通解雇として給付制限なしで受け取れます。
Q. 懲戒解雇の失業保険はいつからもらえますか?
A. 重責解雇と判定された場合は待期7日+給付制限3か月のあと、初回認定日を経て振込なので離職から約4か月後が目安です。重責解雇と認められなければ待期7日のあとすぐ受給が始まり、離職から約1か月後に初回の振込があります。
Q. 会社が離職票に「重責解雇」と書いてきました。覆せますか?
A. 判定するのはハローワークです。離職者記入欄で異議を出し、解雇理由証明書・経緯の記録・診断書などの証拠を持って窓口で説明してください。会社の記載どおりに認定されないケースは珍しくありません。
Q. 懲戒解雇は自己都合扱いですか?
A. 重責解雇と判定された場合は、給付制限と給付日数が自己都合退職と同じ扱いになります(給付制限は自己都合の1か月より長い3か月)。判定されなければ会社都合の解雇として特定受給資格者です。
Q. 懲戒解雇の失業保険はいくらもらえますか?
A. 基本手当日額は解雇の理由で変わりません。離職前6か月の賃金をもとに計算され、受給資格者証で確認できます。違うのは給付日数(重責解雇なら90〜150日)です。
Q. 懲戒解雇を撤回させることはできますか?
A. 就業規則に根拠がない、行為に見合わない重さ、弁明の機会がない、などの場合は無効と判断されることがあります。労働局のあっせん・労働審判・弁護士への相談を検討してください。争っている間も失業保険の手続きは先に進めてください。

まとめ|懲戒解雇でも受給できる。会社の書いた理由をそのまま受け入れない

  • ✅ 懲戒解雇でも失業保険はもらえる。解雇理由は受給要件ではない
  • ✅ 差が出るのは重責解雇と判定されるか。判定するのは会社ではなくハローワーク
  • ✅ 重責解雇なら給付制限3か月・給付日数90〜150日。認められなければ給付制限なし・最大330日
  • ✅ 離職票の離職者記入欄で異議を出し、解雇理由証明書と証拠で説明する
  • ✅ 不当解雇を争う場合も、失業保険の手続きは先に進める
  • ✅ 転職先に解雇の種類は自動では伝わらない。面接では事実を簡潔に

懲戒解雇は本人にとって最も重い出来事ですが、生活と再出発の権利まで奪われるものではありません。まず離職票を持ってハローワークへ行き、あなたの側の事情を伝えるところから始めてください。

※本記事は岩手労働局「給付制限期間の短縮」の案内(重責解雇は3か月)、離職区分の判定に関する社会保険労務士の解説、労働基準法20条・22条、労働契約法15条・16条をもとに2026年9月時点で作成しています。重責解雇の判定は個別の事情によりハローワークが行い、解雇の有効性の判断は最終的に裁判所が行います。個別の事案は弁護士・社会保険労務士にご相談ください。

海田
この記事を書いた人
海田 次郎
人事5年・労務5年の実務を経て、退職支援会社で退職相談の面談を1,000件以上担当。会社側と辞める側の両方を見てきた経験から、制度は一次情報で確認し、サービスの弱点も含めて正直に書くことを方針にしています。

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