入社して1か月。朝、駅のホームで足が止まる。「まだ1か月なのに、もう辞めたいなんて」と自分を責めながら、それでも検索窓に「新卒 辞めたい」と打ってしまった。そんな夜かもしれません。
先に結論を言います。入社1か月で辞めたいと思うのは、甘えではありません。大卒の3人に1人は3年以内に辞めていて、その中で最も多いのが1年目です。あなたは、珍しい人ではありません。
ただし、退職相談の面談で新卒の方に1,000人近く会ってきた経験から、正直に言いたいこともあります。「辞めたい」には、一時的な波と、本当に限界のサインの2種類があって、見分け方があること。そして辞めると決めたなら、辞め方ひとつで、お金も次の転職も大きく変わること。この記事では、その両方を、あなたを責めない形で整理します。
- 入社1か月で辞めたいのは甘えではない、という公的データ
- 「一時的な波」か「限界のサイン」かを見分けるチェックリスト
- 試用期間中でも辞められる法律のルール(2週間・14日・損害賠償の脅し)
- 1か月・2か月・3か月・半年で、失業保険や転職の見え方がどう変わるか
- 自分で言う/退職代行、それぞれの辞め方と、辞めた後のお金・手続き・第二新卒転職
入社1か月で辞めたいのは甘えではない|公的データで見る「新卒が辞める時期」
「新卒はみんな我慢している」という空気の中にいると、自分だけが弱いように感じます。でも、厚生労働省が毎年公表している数字を見ると、印象はかなり変わります。
| 指標 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 大卒の就職後3年以内の離職率 | 33.8%(令和4年3月卒) | 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」2025年10月公表 |
| 高卒の就職後3年以内の離職率 | 37.9%(同上) | 同上 |
| 大卒の1年目の離職率 | 11.8%(平成30年3月卒の内訳。3年間で最も高いのが1年目) | 厚生労働省 同調査 |
| 従業員5人未満の事業所(大卒・3年以内) | 57.5% | 同上(令和4年3月卒) |
| 従業員1,000人以上の事業所(大卒・3年以内) | 27.0% | 同上 |
| 宿泊業・飲食サービス業(大卒・3年以内) | 55.4%(産業別で最も高い) | 同上 |
| 第二新卒の採用を実施している企業 | 52.6% | マイナビ「企業人材ニーズ調査2024年版」 |
| 20代前半の中途採用に積極的な企業 | 84.2% | マイナビ「中途採用状況調査2023年版」 |
| GW明け1日の退職代行への依頼件数 | 約250件(うち約3割が新卒・第二新卒) | TOKYO MX 調べ |
3年以内に辞めた人のうち、いちばん多いのは1年目です。しかも職場の規模や業種によって、離職率は2倍以上違います。つまり「辞めたい」の原因は、あなたの根性ではなく、置かれた環境に大きく左右されているということです。
「一時的な波」か「限界のサイン」か|辞める前に確認してほしい3つのこと
「辞めていい」と背中を押すだけなら簡単です。でも元人事として、辞める前に3つだけ確認してほしいことがあります。これを確認した上で「それでも辞めたい」なら、迷わず動いてください。
確認① 「一時的なもの」か「本当に限界」かを区別する
入社直後は誰でも「こんなはずじゃなかった」という気持ちになります。慣れない環境・人間関係・覚えることの多さで、4月〜5月は心が疲れやすい時期です。この場合の「辞めたい」は、3か月ほどで軽くなることが多いのも事実です。
一方で、次のようなサインがあるときは、一時的な波ではなく、体と心が出している限界のサインです。ひとつでも当てはまるなら、我慢を続けないでください。
眠れない・食欲がない状態が2週間以上続いている
入社前に聞いていた労働条件(給与・勤務地・残業・休日)と実際が大きく違う
パワハラ・セクハラ・人格否定など、明らかな問題がある
「消えてしまいたい」「事故に遭えば休める」という考えが浮かんだことがある
休日も仕事のことが頭から離れず、日曜の夜に涙が出る
確認② 入社1か月では失業保険はもらえない(代わりに受け取れるお金はある)
失業保険(雇用保険の基本手当)は、原則として離職前2年間に被保険者期間が12か月以上必要です。新卒で入社1か月なら、この条件を満たせません。ここは正直に、先にお伝えしておきます。
ただし、受け取れる可能性のあるお金がゼロというわけではありません。詳しくは後半の「辞めた後のお金と手続き」で整理しますが、傷病手当金(在職中に発生した病気・けがで働けない場合)と、アルバイト時代の雇用保険期間の通算は、見落とされやすいポイントです。
確認③ 辞め方を間違えると、次の転職に影響する
入社1か月での退職そのものは、いまの採用市場では致命傷になりません。ただし、無断欠勤のまま連絡を絶つ(バックレ)だけは避けてください。離職票や源泉徴収票の受け取りでトラブルになり、次の会社の入社手続きにも響きます。「辞める」と決めたなら、正しい手順で、短期間で終わらせるのが、あなたを守る辞め方です。
試用期間中でも辞められる|新卒が知っておくべき法律のルール
「試用期間中だから辞められない」「最低1年は働く約束だろう」——会社にそう言われて、動けなくなっている方がとても多いです。結論から言うと、試用期間中でも、入社1か月でも、あなたには辞める権利があります。
| 退職の申し出から退職まで | 2週間(民法第627条1項)。期間の定めのない雇用(正社員)は、申し出から2週間で契約が終了する。会社の承諾は不要 |
| 就業規則の「1か月前」「3か月前」 | 会社のルールとしては尊重されるが、法律上は2週間で辞められる。トラブルを避けるため、可能なら就業規則にも配慮する |
| 試用期間の意味 | 会社側が「本採用するか」を判断する期間。労働者側の退職を制限するものではない |
| 試用期間中の解雇 | 入社14日以内なら解雇予告なしで解雇できる(労働基準法第21条)。14日を超えると30日前の予告か予告手当が必要 |
| 「辞めるなら損害賠償」「研修費を返せ」 | 労働者に違約金や損害賠償額をあらかじめ約束させることは禁止(労働基準法第16条)。実際に請求が認められるケースは極めて限られる |
| 「辞めさせない」「退職届を受け取らない」 | 退職は一方的な意思表示で成立する。受理されなくても、2週間経てば退職できる。内容証明で送る方法もある |
| 有給休暇 | 入社6か月未満は法律上の有給が発生していない。ただし会社独自の付与があれば取得可 |
1か月・2か月・3か月・半年で何が変わる?|辞める時期による違い
「せめて3か月」「半年は続けろ」と言われて、いつ辞めるべきか迷っている方へ。時期によって実際に変わることと、変わらないことを分けて整理します。
| 辞める時期 | 転職での見え方 | 失業保険 | 傷病手当金 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| 入社1か月 | 短期離職だが、理由が明確なら第二新卒枠で十分可能。「試用期間中に合わないと判断した」は理解されやすい | ×(12か月未満) | 在職中の発生・受給要件を満たせば○ | 住民税はまだ発生しないことが多い |
| 2〜3か月 | 1か月と大きな差はない。「一定期間は努力した」と伝えやすい | × | 同上 | ボーナス(夏)は支給対象外のことが多い |
| 半年 | 有給10日が発生(6か月継続勤務・8割出勤)。有給消化しながら辞められる | × | 同上 | 冬のボーナス前に辞めるか迷いやすい時期 |
| 1年 | 雇用保険12か月を満たす可能性(賃金支払日11日以上の月が12か月)。自己都合でも失業保険の対象に | ○の可能性 | 同上 | 第二新卒として最も動きやすい |
それでも辞めたいなら|自分で伝える方法と、退職代行を使う方法
3つの確認をした上で「それでも辞めたい」と思った方へ。辞め方は2つあります。どちらを選んでも、あなたが間違っているわけではありません。
自分で言い出せる方|2週間前に申し出て退職する
朝礼前や終業後など、周りに人がいない時間帯に。メールやチャットで先にアポを取ると切り出しやすい
「一身上の都合で、○月○日をもって退職させていただきたいです」。理由を詳しく話す義務はない。引き止められても「決めたことです」で通す
日付・宛名・「一身上の都合により退職いたします」・署名で十分。コピーを取っておく
出社する/欠勤する/有給があれば消化する。貸与物(PC・保険証・社員証)の返却方法を確認
退職後に郵送されるのが一般的。届かなければ会社に請求。健康保険の切り替えに必要
「今辞めたら次はないよ」→「承知の上です」
「損害賠償を請求する」→「法律上、認められないと理解しています」(労働基準法第16条)
議論をしないのがコツです。説得に応じる必要はありません。
言い出せない方|退職代行を使う
「入社したばかりで言い出しにくい」「上司が怖くて話せない」「出社しようとすると体が動かない」——そういう方は退職代行を使ってください。依頼した翌日から出社不要になります。入社間もない方からの依頼は毎年多く、退職代行側も慣れています。
新卒・試用期間中の方が選ぶときのポイントは3つ。①労働組合か弁護士が運営している(会社と交渉できる)、②後払いに対応している(初任給前でも使える)、③即日対応。この条件で、面談でもよく紹介してきた会社を挙げます。
辞めた後のお金と手続き|失業保険がもらえなくても、できることはある
入社1か月で辞めると、失業保険は受け取れません。ここを正直に書いた上で、「では何ができるか」を整理します。
受け取れる可能性のあるお金
| 傷病手当金(健康保険) | 在職中に病気・けがで連続3日以上休み、4日目以降も働けない場合に、標準報酬日額の3分の2が最長で通算1年6か月支給される。退職後も続けて受け取るには、退職日までに受給要件を満たし、退職日当日に出勤していないことが条件。新卒1か月でも、健康保険に加入していれば対象になりうる |
| 前職(アルバイト等)の雇用保険との通算 | 学生時代に週20時間以上のアルバイトで雇用保険に入っていた期間は、間が空いていなければ通算できる。合計12か月以上なら失業保険の対象になる可能性 |
| 最後の給与・未払い残業代 | 働いた分の給与は日割りで必ず支払われる。研修期間中でも同じ。未払いがあれば労働基準監督署に相談できる |
| 住民税 | 住民税は前年の所得に対してかかる。新卒1年目は前年(学生時代)の所得が少ないため、退職後に住民税の請求が来ないことが多い |
退職後2週間以内にやる手続き
①親の扶養に戻る(年収見込み130万円未満等の条件)②国民健康保険に加入 ③任意継続(在職2か月以上が条件のため、1か月退職では使えないことが多い)。新卒なら親の扶養に戻るのが最も負担が軽いケースが多い
厚生年金→国民年金へ。市区町村役場で手続き。収入がなければ免除・納付猶予の申請ができる
離職票(次の会社で1年以上働けば、この期間も通算に使える)・源泉徴収票(次の会社の年末調整に必要)・雇用保険被保険者証
受給資格がなくても、離職票を保管しておく。次の職場を早めに辞めた場合に期間を通算できることがある
「体調が悪くて、どの制度が自分に当てはまるのか調べる気力がない」という方は、退職後のお金の整理を手伝ってくれる給付金サポートに、無料相談だけしてみるのも一つの方法です。手続き自体は自分でもできるので、料金と対応範囲を聞いてから決めてください。
第二新卒としての転職|1か月の職歴は書く?面接でどう伝える?
退職後の不安でいちばん多いのが「1か月で辞めた自分を、次の会社は採ってくれるのか」です。結論、採ってくれます。中途採用担当者352人を対象にした調査では、今後2〜3年間の第二新卒採用について6割以上が「積極的」と回答し、20代前半・中盤の層に対しては企業の84.2%が積極的に採用すると回答しています。
1か月の職歴は履歴書に書く
「1か月だけなら書かなくてもバレない」と考える方がいますが、書いてください。雇用保険と社会保険の加入記録は次の会社の手続きで分かるため、隠すと経歴詐称として内定取り消しの理由になりえます。短期離職そのものより、隠したことのほうがはるかに不利です。
面接での伝え方|「環境のせい」にしない、でも自分を責めすぎない
| 避けたい言い方 | 「上司が最悪で」「思っていたのと違った」だけで終わる(他責に聞こえる)/「自分が弱くて」と自己否定で終わる |
| 伝わる言い方 | 事実 → 自分なりに試したこと → 次に活かす条件の順。「入社後に勤務条件が募集内容と異なることが分かり、上司にも相談しましたが改善が難しく、早い段階で環境を変える判断をしました。次は○○を確認した上で長く働ける環境を選びたいと考えています」 |
| 体調が理由の場合 | 「体調を崩し、医師と相談して療養を優先しました。現在は回復し、就業に支障はありません」と、現在は働けることを明確に |
親や周りに、どう伝える?
「せっかく就職したのに」「もう少し頑張れ」と言われるのが怖くて、親に言えずにいる方も多いです。面談で伝えてきたのは、「決めてから報告する」でいいということ。相談の形にすると、親は止める側に回りやすいからです。
伝えるときは、「辞めたい」ではなく「辞めることにした。理由は○○。次は○○するつもり」と、結論・理由・次の一手の3点をセットで。体調が理由なら、無理に詳しく話さなくて構いません。「体を優先することにした」で十分です。
よくある質問
まとめ|入社1か月で辞めたいのは甘えではない。ただし、辞め方は選んでほしい
大卒の3人に1人が3年以内に辞め、その中でいちばん多いのが1年目。あなたの「辞めたい」は、珍しくも、恥ずかしくもありません。限界のサインが出ているなら、我慢を続けないでください。試用期間中でも、法律上は2週間で辞められます。
その上で、辞め方だけは選んでください。無断で消えない・書類を受け取る・体調が悪ければ退職前に受診する。この3つで、お金も次の転職も守れます。自分で言えないなら、退職代行を使っていい。それは逃げではなく、あなたを守る手段です。
今日できることはひとつで十分です。限界のチェックリストを見返して、当てはまるなら受診の予約を。当てはまらないなら、もう2週間だけ様子を見る。どちらを選んでも、あなたは間違っていません。
※本記事は2026年9月時点で、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」、民法・労働基準法・雇用保険法の一般的な解釈、および各社の公開情報をもとに作成しています。失業保険・傷病手当金の受給可否は個別の状況とハローワーク・健康保険の判断で決まります。法的な争いがある場合は弁護士にご相談ください。当サイトはアフィリエイト広告を掲載していますが、報酬の有無で内容を変えていません。




