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「退職給付金で数百万円もらえる」——SNSや広告でこんな言葉を見て、「本当?」「怪しくない?」と感じた人は多いはずです。
元人事として先に言うと、「退職給付金」という公的な制度はありません。正体は、失業保険(雇用保険の基本手当)や傷病手当金といった、誰でも条件を満たせば自分で申請できる給付です。怪しいのは制度ではなく、その申請を「サポート」すると言って高い料金を取る一部の業者です。
この記事では、国民生活センターの注意喚起と法律をもとに、トラブルになりやすいサポートの見分け方と、自分で申請する方法を整理します。
- 「退職給付金」は広告上の呼び名。中身は失業保険・傷病手当金など公的な給付で、もらえるか・いくらかはハローワークや健康保険の審査で決まる
- 国民生活センターには、申請サポートの相談が2021年度42件→2024年度217件と増えている
- 「受給額が増える」と断言する、体調不良がないのに受診を勧める、料金や解約条件を書面で出さない業者は避ける
- 申請は自分でやれば0円。サポートを使うなら、料金・返金・解約の条件を契約前に書面で確認する
目次
「退職給付金」の正体は、失業保険と傷病手当金
「退職給付金」は、サポート業者の広告などで使われる呼び名です。国の制度の名前ではありません。実際に受け取るのは、主に次の公的な給付です。
| 給付 | どんなお金か・どこに申請するか |
|---|---|
| 失業保険(雇用保険の基本手当) | 働く意思と能力があり、仕事を探している人がもらえる。住所地のハローワークで手続き |
| 傷病手当金 | 病気やけがで働けない人がもらえる。加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に申請。条件を満たせば退職後も続けてもらえる |
| 再就職手当 | 失業保険の日数を残して早く就職した人がもらえる。ハローワークに申請 |
どれも、もらえるかどうか・金額・期間は、ハローワークや健康保険の審査で決まります。サポート会社を使っても、制度で決まった金額が増えるわけではありません。くわしくは退職給付金とは?正体は失業保険と傷病手当金で解説しています。
「怪しい」と言われる理由|国民生活センターへの相談が急増
国民生活センターは2025年12月3日、「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意」と公表しました。全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は、次のように増えています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2021年度 | 42件 |
| 2022年度 | 54件 |
| 2023年度 | 113件 |
| 2024年度 | 217件 |
| 2025年度(10月31日まで) | 216件 |
目立つ相談は、次の3つのパターンです。
- 受給額が増えると思ったのに、増えなかった
- 途中で解約したいと言ったら認めてもらえなかったり、違約金を請求されたりした
- うつ病などの不調がないのに、指定のクリニックで受診するよう指示された(不正受給を促すような誘導)
とくに3つ目は要注意です。事実と違う内容で申請すると不正受給になり、責任を問われるのは申請した本人です。不正受給と判断されると、もらった額の返還に加えて、その2倍以下の金額の納付(いわゆる「3倍返し」)を命じられることがあります。
トラブルになりやすいサポートの見分け方|7つのチェック
次のどれかに当てはまったら、契約はいったん止めて考えてください。
- 「受給額が増える」「必ずもらえる」と言い切る:給付は審査で決まるもので、保証できる業者はありません
- 体調不良がないのに、受診や診断書を勧めてくる:不正受給の誘導につながるおそれがあります
- 料金の総額を、契約前に書面で出さない:「受給額の何%」なのか「定額いくら」なのか、いつ・いくら払うのかを確認します
- 解約の条件や違約金があいまい:途中でやめたいときにいくらかかるかを確認します
- 社会保険労務士ではないのに、申請書の作成や提出の代行を報酬を取って引き受ける:社会保険労務士法27条で、社労士(社労士法人)でない人が報酬を得て行うことは禁止されています
- 運営会社・所在地・責任者がはっきりしない:「特定商取引法に基づく表記」に会社名・住所・電話番号が書かれているかを見ます
- 「今日中に申し込まないと間に合わない」と急かす:手続きの期限はありますが、その場で契約を決める必要はありません
人事として離職票や健康保険の書類を作っていた立場から言うと、失業保険も傷病手当金も、書類と手順さえ分かれば自分で手続きできる人がほとんどです。業者に頼むかどうかは、「何が使えるか自分で調べてみてから」決めても遅くありません。
自分で申請する方法|費用は0円
失業保険(ハローワーク)
- 会社から離職票(1・2)を受け取る
- 住所地のハローワークで求職の申し込みをして、離職票などを出す
- 雇用保険受給者説明会に出る
- 原則4週間に1度の失業認定日に、求職活動の実績などを申告する
- 認定されると、指定した口座に振り込まれる
流れと必要書類は失業保険のもらい方|手続きの流れ7ステップ、金額の目安は失業保険はいくらもらえる?で確認できます。
傷病手当金(健康保険)
- 病気やけがで働けない状態について、医師の意見(申請書の医師記入欄)をもらう
- 申請書を加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に出す(在職中の期間は会社の記入も必要)
- 退職後も続けてもらうには、退職日までに条件を満たしている必要がある
退職後も受け取る条件は傷病手当金は退職後ももらえる?条件と申請方法にまとめています。
サポートを使うなら、契約前にここを確認
「何が使えるか分からない」「体調が悪く一人で整理するのがつらい」という場合、サポートを使うのも一つの方法です。そのときは、少なくとも次の点を書面で確認してください。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 料金の形 | 「受給額の◯%」か「定額◯円」か。総額でいくらになりそうか |
| 無料の範囲 | 診断や相談はどこまで無料か。どの時点からお金がかかるか |
| 支払いの時期 | 前払い・預かり金・後払いのどれか |
| 返金・解約 | 受給できなかったときの返金、途中でやめたときの違約金 |
| クーリングオフ | 対象になるか、何日以内か、連絡先はどこか |
| 誰が対応するか | 申請書の作成や提出の代行がある場合は、社会保険労務士が行うか |
当サイトで各社の公式サイトと特定商取引法の表記を確認したところ、料金は「受給額の10〜15%」の会社から、「16万円〜30万円以上の定額」の会社まで大きな差がありました。比べるときは退職給付金サポートの比較も参考にしてください。
よくある質問
Q. 退職給付金はだれでももらえますか?
A. いいえ。失業保険なら雇用保険に入っていた期間や、働く意思・能力があることなど、傷病手当金なら病気やけがで働けないことなど、それぞれ条件があります。条件を満たすかどうかは審査で決まります。
Q. サポート会社を使うと、もらえる金額は増えますか?
A. 制度で決まる金額そのものは増えません。使える制度の見落としを防ぐ、手続きの順番を整理する、といった手助けが中心です。「増える」と断言する業者には注意してください。
Q. 申請を全部代わりにやってもらえますか?
A. 申請書の作成や提出の代行を報酬を得て行えるのは、社会保険労務士(社労士法人)です。社労士でない会社が行うのは、情報提供や、本人が申請するための準備の手伝いまでです。
Q. 契約してしまったけれど不安です。
A. 契約書面を受け取った日から数えて8日以内なら、クーリングオフできる場合があります。困ったときは、消費者ホットライン「188」に電話すると最寄りの消費生活センターにつながります。手続きそのものの疑問は、住所地のハローワークに相談できます。
まとめ|怪しいのは制度ではなく「増える」とうたう業者
「退職給付金」の正体は、失業保険や傷病手当金などの公的な給付です。自分で申請すれば費用はかかりません。サポートを使うなら、「受給額が増える」と言わない、料金と解約条件を書面で出す、運営会社がはっきりしている——この3つを満たすところを選んでください。
まずは退職後にやることリストで、自分がいつ・どこで何をするかを確認するのがおすすめです。
出典(2026年10月27日に確認)



