失業保険(雇用保険の基本手当)をもらう条件は、突き詰めると3つです。①雇用保険に一定期間入っていた ②「失業の状態」にある ③ハローワークで求職の申込みをした。この3つがそろえば、自己都合でも、アルバイトでも、試用期間中の退職でも受給できます。
ただし①の「一定期間」は辞め方で変わり(2年で12か月か1年で6か月か)、②の「失業の状態」は窓口での一言で認められなくなることがあります。人事・労務として10年、離職票を何百枚も書き、退職支援の会社で1,000件以上の相談を受けてきた立場から、条件の中身・自分が満たしているかの判定・満たしたあとに何日もらえるかを、迷いやすいケースごとに整理します。
・被保険者期間「2年で12か月」「1年で6か月」の数え方(前職と通算できる)
・「失業の状態」と認められない例
・ハローワークでの手続きの流れ(待期7日・給付制限)
・条件を満たしたら何日・いくらもらえるか(給付日数表)
・アルバイト/派遣/試用期間/65歳以上/うつ病 などケース別の早見表
失業保険の受給条件は3つ
| 条件 | 内容 | つまずきやすいポイント |
|---|---|---|
| ① 被保険者期間 | 離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上(会社都合など特定受給資格者・特定理由離職者は1年間に6か月以上) | 入社1年未満の自己都合退職。前職との通算を忘れている |
| ② 失業の状態 | 就職する意思と能力があり、求職活動をしているのに職業に就けない状態 | 「しばらく休む」「家事に専念」と申告すると対象外。病気で働けない場合は延長手続きが必要 |
| ③ 求職の申込み | 住所地のハローワークで求職申込みをして受給資格の決定を受ける | 離職票が届かず手続きが遅れる。受給期間は離職翌日から1年 |
この3つは雇用保険法とハローワークの案内で示されている要件です。「正社員でないと無理」「自己都合だともらえない」といった条件はありません。順番に見ていきます。
条件①|被保険者期間は「2年で12か月」か「1年で6か月」か
一番つまずきやすいのがここです。辞め方によって必要な期間が変わります。
| 離職理由 | 必要な被保険者期間 | 該当する主な例 |
|---|---|---|
| 一般の離職者(自己都合など) | 離職日以前2年間に通算12か月以上 | 転職・キャリアチェンジ・人間関係などの自己都合退職、定年退職 |
| 特定受給資格者 | 離職日以前1年間に通算6か月以上 | 倒産・解雇(懲戒解雇を除く)・退職勧奨・賃金未払い・長時間残業・ハラスメントなど会社都合 |
| 特定理由離職者 | 離職日以前1年間に通算6か月以上 | 契約更新を希望したのに更新されなかった雇止め、病気・妊娠・家族の介護・通勤困難など正当な理由のある自己都合 |
「被保険者期間1か月」の数え方
カレンダーの月ではなく、離職日からさかのぼって1か月ごとに区切り、その区切りの中で次のどちらかを満たす月を「1か月」と数えます。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 賃金支払基礎日数 | その1か月に11日以上ある(出勤日+有給休暇の日数) |
| 賃金支払基礎時間数 | 11日に満たなくても80時間以上ある(2020年8月以降の基準) |
前職と通算できる(1年以内の空白・前職で受給していないこと)
被保険者期間は会社をまたいで通算できます。今の会社が4か月でも、前の会社で8か月あれば合計12か月です。ただし次の2つの条件があります。
- ✅ 前職の離職から今の会社の入社まで、雇用保険に入っていない期間が1年以内であること
- ✅ 前職の離職後に失業保険の受給資格の決定を受けていないこと(一度受給資格が決まると、それ以前の期間は通算できない)
通算するときは前職の離職票も必要です。手元にない場合は前の会社に発行を依頼するか、ハローワークに相談してください。
自分は何か月ある? 判定の例
| 状況 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 入社8か月・自己都合で退職 | × | 一般の離職者は2年で12か月必要 |
| 入社8か月・会社都合(解雇・退職勧奨)で退職 | ○ | 特定受給資格者は1年で6か月でよい |
| 入社8か月・自己都合。前職10か月(離職から半年後に入社、受給なし) | ○ | 通算18か月。空白1年以内・受給歴なし |
| 入社8か月・自己都合。前職で失業保険を受給済み | × | 受給で前職分はリセット。今の8か月だけで判定 |
| 週20時間・入社1年半のパート・自己都合 | ○ | 雇用保険に加入していれば雇用形態は関係ない |
| 入社2か月の試用期間中に会社都合で解雇 | ×(前職通算があれば○) | 特定受給資格者でも6か月は必要 |
条件②|「失業の状態」と認められる人・認められない人
ハローワークの定義は「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就くことができない状態」です。逆に言うと、次のような人は雇用保険に何年入っていても受給できません。
| 認められない例 | 理由 | どうすればよいか |
|---|---|---|
| 病気やけがで、すぐに就職できない | 就職できる「能力」がない状態 | 受給期間の延長を申請し、働ける状態になってから受給 |
| 妊娠・出産・育児で、すぐに就職できない | 同上 | 受給期間の延長(最長3年) |
| 定年退職などで、しばらく休養したい | 就職の「意思」がない | 休養を終えてから求職申込み(60歳以上の定年は最長1年の延長制度あり) |
| 結婚などで家事に専念する | 同上 | 働く意思があるなら、パートでも求職申込みは可能 |
| 昼間の学校に通う・学業に専念する | いつでも就職できる状態ではない | 卒業後に求職申込み |
| 自営業を始めた・準備中、会社役員に就任 | 失業ではない | 準備段階でも申告が必要。開業なら受給期間の特例あり |
| 次の就職先が決まっている | 失業ではない | 入社までの短期間でも原則対象外 |
条件③|ハローワークで求職の申込みをする(手続きの流れ)
条件①②を満たしていても、ハローワークに行かなければ1円も支給されません。流れは次のとおりです。
受給期間は離職日の翌日から1年です。手続きが遅れても受給期間は延びないので、所定給付日数が長い人ほど早く行く必要があります。
条件を満たしたら何日・いくらもらえる?
もらえる日数(所定給付日数)は離職理由・年齢・被保険者期間で決まります。
自己都合・定年など(一般の離職者)
| 被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|
| 全年齢 | — | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合など(特定受給資格者・雇止めの特定理由離職者)
| 年齢/被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | — |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
就職困難者(障害者手帳をお持ちの方など)
| 年齢/被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上 |
|---|---|---|
| 45歳未満 | 150日 | 300日 |
| 45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
1日あたりの金額(基本手当日額)
離職前6か月の賃金(賞与を除く)÷180で「賃金日額」を出し、50〜80%(60〜64歳は45〜80%)の給付率をかけます。賃金が低いほど率は高くなります。上限は年齢別に決まっていて、2026年8月1日改定の額は次のとおりです。
| 年齢 | 基本手当日額の上限 | 下限(全年齢共通) |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 7,450円 | 2,562円 |
| 30〜44歳 | 8,270円 | 2,562円 |
| 45〜59歳 | 9,110円 | 2,562円 |
| 60〜64歳 | 7,830円 | 2,562円 |
ケース別|私はもらえる? 早見表
| ケース | もらえる? | ポイント |
|---|---|---|
| アルバイト・パート | ○(加入していれば) | 週20時間以上・31日以上の雇用見込みで雇用保険に加入。給与明細の「雇用保険料」欄で確認 |
| 派遣・契約社員の契約満了 | ○ | 更新を希望したのに更新されなかった場合は特定理由離職者。給付制限なし |
| 試用期間中に退職・解雇 | △ | 被保険者期間が足りるかが問題。前職と通算できれば可 |
| 65歳以上で退職 | ○(別の給付) | 基本手当ではなく高年齢求職者給付金。30日分か50日分を一括 |
| 自営業・フリーランス・個人事業主 | × | 雇用保険の被保険者ではない。会社員時代の離職分で受給中に開業準備を始めるなら申告が必要 |
| 公務員 | × | 雇用保険の適用除外(別に退職手当の制度がある) |
| 懲戒解雇 | ○ | 受給できる。重責解雇と判定されると給付制限3か月・日数は一般扱い |
| 妊娠・出産で退職 | ○(延長後) | 受給期間を最長3年延長し、働ける状態になってから受給。特定理由離職者 |
| うつ病・適応障害で退職 | ○(状態による) | 働けるなら受給、働けないなら延長。就職困難者に該当すれば300日 |
| 会社の役員 | ×(原則) | 役員は被保険者ではない。兼務役員で労働者性が認められる場合は例外 |
| 退職後に前職の失業保険を受け取らず転職し、また退職 | ○ | 前職分と通算できる(空白1年以内) |
条件を満たしたあとに「もらえなくなる」3つの落とし穴
| 落とし穴 | 何が起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 受給中のアルバイトを申告しない | 不正受給。支給停止+返還+最大2倍の納付(いわゆる3倍返し) | 1日4時間以上の労働は「就労」、4時間未満は「内職」として失業認定申告書にすべて記入 |
| 求職活動実績が足りない | その期間は不認定(支給されない) | 認定日までに原則2回。求人応募・セミナー・職業相談など |
| 受給期間1年を過ぎる | 残っている日数があっても打ち切り | 離職票が届いたらすぐ手続き。働けない事情があれば延長申請 |
会社側の実務としても、離職票の「離職理由」欄と「賃金支払基礎日数」欄は、そのままあなたの受給条件と日数を決める書類です。届いた離職票の内容が事実と違う場合は、ハローワークで異議を申し出ることができます。署名する前に必ず確認してください。
失業保険の受給条件に関するよくある質問
まとめ|条件は「加入期間」「失業の状態」「求職申込み」の3つ
- ✅ 受給条件は①被保険者期間 ②失業の状態 ③ハローワークで求職申込みの3つ
- ✅ 被保険者期間は自己都合なら2年で12か月、会社都合・雇止め・病気などなら1年で6か月
- ✅ 1か月の数え方は賃金支払基礎日数11日以上または80時間以上。前職と通算できる(空白1年以内・受給歴なし)
- ✅ 病気・妊娠・休養・家事専念・学業は「失業の状態」ではない。働けないなら受給期間の延長
- ✅ 受給期間は離職翌日から1年。自己都合の給付制限は原則1か月
- ✅ 雇用形態は関係ない。アルバイト・パート・派遣も加入していれば対象。65歳以上は高年齢求職者給付金
「自分は条件を満たしていない」と思い込んで手続きをしなかった人が、実は前職との通算で受給できたケースを何度も見てきました。判断に迷ったら、離職票を持ってハローワークの窓口で「受給資格があるか確認したい」と伝えれば、その場で判定してもらえます。
※本記事はハローワークインターネットサービス「基本手当について」(受給要件・失業の状態の定義・被保険者期間の数え方・受給できない例)、「基本手当の所定給付日数」、厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」をもとに2026年9月時点で作成しています。給付制限の期間・特定理由離職者の暫定措置・雇用保険の加入要件は法改正で変わるため、最終的な判定はハローワークが行います。



