退職した翌日。会社に行かなくていい朝は、ほっとするのと同時に「で、何をすればいいんだっけ」という不安がやってきます。健康保険、年金、ハローワーク、税金——言葉は知っていても、どれを・いつまでに・どこでやるのかは、誰も教えてくれません。
この記事は、退職相談の面談で毎回渡していた「退職後にやることリスト」を、そのまま記事にしたものです。期限の早い順に並べ、それぞれ「期限・場所・持ち物・やらないとどうなるか」まで書きました。上から順に消していけば、取りこぼしはありません。
各制度の細かい話は、この記事から個別の解説記事へ飛べるようにしています。まずはこの1ページで全体を把握してください。
- 退職後の手続きの全体像と順番(期限つき一覧表)
- 健康保険・年金・失業保険・税金、それぞれ「いつまで・どこで・何を持って」
- 必要書類の一覧と、会社から受け取るもの/返すもの
- すぐ再就職する人・扶養に入る人・14日を過ぎた人など、状況別の対応
- 忘れがちな企業型DC(確定拠出年金)・住民税の一括徴収・確定申告
退職後の手続き一覧|期限が早い順のチェックリスト
まず全体像です。「14日以内」が2つ、「20日以内」が1つ——ここを過ぎると面倒になるので、最初の2週間に集中してください。
| 期限 | やること | 場所 | 必要なもの |
|---|---|---|---|
| 退職日まで | 会社から書類を受け取る手配・貸与物の返却・保険証の返却 | 会社 | — |
| 退職翌日から14日以内 | 国民健康保険への加入(任意継続・扶養を選ばない場合) | 市区町村役場 | 資格喪失証明書(または離職票)・本人確認書類・マイナンバー |
| 退職翌日から14日以内 | 国民年金への切り替え(第1号被保険者) | 市区町村役場(年金事務所でも可) | 年金手帳または基礎年金番号通知書・離職票等・本人確認書類 |
| 退職翌日から20日以内 | 健康保険の任意継続を選ぶ場合の申請 | 加入していた健康保険(協会けんぽ・健保組合) | 任意継続被保険者資格取得申出書 |
| 離職票が届いたらすぐ(退職後10日〜2週間) | ハローワークで失業保険の申請 | 管轄ハローワーク | 離職票1・2、マイナンバー確認書類、本人確認書類、写真2枚、通帳 |
| 退職後すみやかに | 扶養に入る場合の手続き | 家族の勤務先 | 家族の勤務先所定の書類・離職票の写し等 |
| 退職後6か月以内 | 企業型DC(確定拠出年金)の移換(iDeCo等へ) | 運営管理機関 | 移換の申込書類 |
| 6月・8月・10月・翌1月(普通徴収の場合) | 住民税の納付 | 納付書で支払い | 納付書 |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 確定申告(年内に再就職しなかった場合) | 税務署・e-Tax | 源泉徴収票・控除証明書・マイナンバー |
| 随時 | 再就職が決まったら:ハローワークへ届出(再就職手当)、健康保険・年金は新しい会社で | ハローワーク・新しい会社 | 採用証明書・受給資格者証 |
退職日までに|会社から受け取る書類・返す物
退職後の手続きは、会社から受け取る書類がないと始まりません。「いつ・どうやって届くか」を退職日までに確認しておくのが、最初の一歩です。
| 受け取るもの | いつ | 使いみち |
|---|---|---|
| 離職票(1・2) | 退職後10日〜2週間で郵送 | 失業保険の申請・国保の軽減・年金の免除申請 |
| 雇用保険被保険者証 | 退職時または離職票と一緒 | 失業保険の申請・次の会社への提出 |
| 源泉徴収票 | 退職後1か月以内が目安(年末の場合は翌年1月) | 確定申告・次の会社の年末調整 |
| 健康保険資格喪失証明書 | 退職後すぐ(依頼が必要な会社もある) | 国民健康保険の加入・扶養に入る手続き |
| 年金手帳・基礎年金番号通知書 | 会社が預かっていれば返却 | 国民年金の手続き |
| 退職証明書 | 依頼すれば発行(会社は発行義務あり) | 離職票が遅れているときの代用・扶養の手続き |
| 返すもの | 健康保険証(本人・家族分)・社員証・入館証・名刺・貸与PC/スマホ・制服・鍵・書類データ |
| 届かないとき | 離職票は退職から2週間過ぎても届かなければ会社に連絡。連絡しにくければハローワークに相談すると会社へ催促してもらえる |
| 退職代行を使った場合 | 書類は郵送でやりとりするのが一般的。退職代行に「離職票・源泉徴収票の発行と郵送」を伝えてもらう |
退職後14日以内|健康保険は3つから選ぶ
会社の健康保険は退職日の翌日に資格を失います。その日から、次のどれかに入る必要があります。病院にかかる予定がなくても、無保険の期間は作らないでください(あとから遡って保険料を払うことになります)。
| 選択肢 | 期限 | 保険料の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険(国保) | 退職翌日から14日以内・市区町村 | 前年所得で計算。会社都合・契約満了・特定理由離職者は「前年所得を30%として計算」する軽減あり | 会社都合等で軽減が使える人/収入が下がる人 |
| 任意継続 | 退職翌日から20日以内・加入していた健保 | 在職時の約2倍(会社負担分がなくなる)。ただし上限あり。最長2年 | 前年所得が高く、国保が高くなる人/扶養家族が多い人 |
| 家族の扶養 | すみやかに・家族の勤務先 | 0円 | 年収見込み130万円未満等の条件を満たす人(失業保険の日額が高いと入れないことがある) |
退職後14日以内|国民年金への切り替えと、払えないときの免除
厚生年金も退職日の翌日に資格を失い、20歳以上60歳未満なら国民年金の第1号被保険者になります。手続きは市区町村役場(年金事務所でも可)で、健康保険と同じ日に済ませられます。
| 期限 | 退職翌日から14日以内 |
| 場所 | 市区町村の国民年金窓口(年金事務所でも可)。マイナポータルからの電子申請も可 |
| 持ち物 | 年金手帳または基礎年金番号通知書・離職票などの退職日が分かる書類・本人確認書類・マイナンバー |
| 保険料 | 月額約17,000円台(年度で変わる) |
| 払えないとき | 失業を理由とした特例免除・納付猶予がある(前年所得を除外して審査)。離職票か雇用保険受給資格者証を添える。未納のまま放置すると障害年金・遺族年金の要件で不利になるので、必ず免除申請を |
| 配偶者の扶養に入る場合 | 第3号被保険者になり保険料は0円。配偶者の勤務先経由で手続き |
| 厚生年金の記録 | 退職までの加入分は消えない。将来の年金に反映される |
離職票が届いたら|ハローワークで失業保険の申請
失業保険(雇用保険の基本手当)は、離職票を持ってハローワークで求職申込みをした日から動き始めます。受給できる期間は原則「離職日の翌日から1年」なので、離職票が届いたらすぐに行ってください。
離職票1・2、マイナンバー確認書類、本人確認書類、写真2枚(縦3.0×横2.4cm)、本人名義の通帳、印鑑(不要な所も)
ここで離職理由(自己都合/会社都合)が確定する。離職票の記載に納得できなければ「異議あり」に○
受給資格者証と失業認定申告書を受け取る
会社都合等なら約21日分が2〜3営業日後に振込。自己都合は給付制限1か月があり、実質の初回振込は約2か月後
求職活動実績2回以上を報告 → 28日分ずつ振込
| 離職理由 | 給付制限 | 受給要件 | 給付日数 |
|---|---|---|---|
| 自己都合 | 原則1か月 | 2年間に12か月 | 90〜150日 |
| 会社都合・契約満了(更新希望あり)・パワハラ等 | なし | 1年間に6か月でも可 | 90〜330日 |
| 病気・介護等の正当な理由(特定理由離職者) | なし | 1年間に6か月でも可 | 90〜150日 |
税金|住民税の一括徴収・確定申告・退職金
住民税:退職月で払い方が変わる
住民税は前年の所得に対して、その年の6月から翌年5月にかけて払います。退職しても前年分の残りは消えません。
| 退職月 | 残りの住民税の払い方 |
|---|---|
| 1月〜5月 | 原則、最後の給与・退職金から一括徴収(5月分まで) |
| 6月〜12月 | 一括徴収か、普通徴収(自分で納付書で払う)かを選べる。何も言わないと普通徴収になることが多い |
| 翌年 | 退職した年の所得に対する住民税が、翌年6月から請求される。収入がなくても請求は来るので、資金を残しておく |
所得税:年内に再就職しなければ確定申告(ほとんどの人は還付)
| 年内に再就職した | 新しい会社に前の会社の源泉徴収票を提出すれば年末調整で完了 |
| 年内に再就職しなかった | 翌年2月16日〜3月15日に確定申告。給与から引かれていた所得税は「1年間働く前提」で多めに引かれているため、払いすぎた分が戻る(還付)ケースが大半。還付申告は1月から5年間できる |
| 必要なもの | 源泉徴収票・生命保険/地震保険の控除証明書・国民年金/国保の支払額が分かるもの・マイナンバー・通帳 |
| 退職金 | 会社に「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば源泉分離課税で完了。出していなければ20.42%が引かれているので、確定申告で精算できる |
| 失業保険 | 非課税。確定申告に含めない |
忘れがちな手続き|企業型DC・保険・カード・社宅
| 項目 | やること | 期限・注意 |
|---|---|---|
| 企業型DC(確定拠出年金) | iDeCoまたは転職先の企業型DCへ移換 | 退職後6か月以内。放置すると国民年金基金連合会に自動移換され、手数料を引かれ運用もされない |
| 団体生命保険・団体医療保険 | 個人契約への切り替え、または解約 | 退職で自動的に終了することが多い。無保険にならないよう確認 |
| 財形貯蓄・持株会 | 解約・払い出しの手続き | 退職から一定期間で自動解約されることがある |
| 社宅・寮 | 退去日と原状回復の確認 | 退職日=退去日の会社も多い。次の住まいの契約を先に |
| 通勤定期の払い戻し | 会社に精算方法を確認 | 未使用分は返金が必要なことがある |
| クレジットカード・銀行・ローン | 勤務先変更の届出 | 転職先が決まってからでもよいが、審査中のローンは注意 |
| iDeCoに加入していた | 「加入者被保険者種別変更届」を提出 | 第2号→第1号への変更。掛金上限も変わる |
状況別|あなたの場合はどれ?
| 退職翌日から次の会社に入社する | 健康保険・年金は新しい会社で手続き。役所での手続きは不要。前の会社の源泉徴収票と雇用保険被保険者証を新しい会社へ |
| 入社まで数日〜数週間の空白がある | 空白期間は国保・国民年金の手続きが必要(保険料は月末時点で加入している制度にかかる)。短くても病院にかかる可能性があるなら加入を |
| 配偶者・親の扶養に入る | 家族の勤務先経由で健康保険(+配偶者なら年金第3号)。年収見込み130万円未満等が条件。失業保険の日額が3,612円以上だと受給中は入れないのが一般的なので、受給前後で切り替える |
| 14日を過ぎてしまった | 国保・国民年金とも今からでも手続きできる(退職翌日に遡って加入・保険料も遡る)。罰則より、無保険期間に病院にかかった場合の全額負担が問題。すぐ役所へ |
| 病気・けがで働けない | 失業保険は「働ける人」向けなので、先に傷病手当金(在職中に発生していれば退職後も)。失業保険は受給期間の延長を申請しておく |
| 引っ越す | 転出・転入届と同時に国保・年金も新住所で。ハローワークも新住所の管轄に変わる |
| パワハラ・体調不良で辞めた | 離職票の区分を確認。特定受給資格者・特定理由離職者なら給付制限なし+国保軽減。ハローワークで申し出る |
まだ退職していない方は、退職日を「月末」にするか「月途中」にするかで社会保険料が1か月分変わることも知っておいてください。退職日の調整や有給消化の交渉を含めて、会社と話しにくい場合は退職代行に任せる方法もあります。
必要書類・持ち物の一覧|役所とハローワークに行く日のカバンの中身
離職票1・2(届く前なら健康保険資格喪失証明書・退職証明書で代用できる手続きもある)
雇用保険被保険者証
年金手帳または基礎年金番号通知書
マイナンバーカード(通知カード+本人確認書類でも可)
本人確認書類(運転免許証など)
証明写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm・ハローワーク用。マイナンバーカード提示で不要な場合あり)
本人名義の通帳またはキャッシュカード(失業保険の振込先)
印鑑(不要な窓口も増えたが念のため)
健康保険資格喪失証明書(会社から)
扶養に入る場合:家族の勤務先所定の書類・続柄の分かる書類
退職後の生活費|初回振込までの3か月を、どうつなぐか
自己都合退職なら、失業保険の初回振込は申請から約2か月後。その間に、国保・年金・住民税の請求は来ます。「入ってくる前に出ていく」のが退職後のお金の現実です。
| 項目 | 1か月の目安(単身・前年年収350万円程度) | 減らす方法 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 2〜3万円 | 会社都合等なら軽減(前年所得を30%で計算) |
| 国民年金 | 約1.7万円 | 失業の特例免除・納付猶予 |
| 住民税(前年分の残り) | 1〜2万円 | 分割・猶予の相談(市区町村) |
| 家賃・生活費 | 人による | — |
| 収入:失業保険 | 日額×日数(月給25万円なら28日分で約16万円) | 早く申請するほど早く入る |
「制度が多すぎて、自分に何が当てはまるのか分からない」——そう感じたら、退職後の給付をまとめて整理してくれる給付金サポートに無料相談だけしてみるのも一つの方法です。手続きは自分でもできるので、料金と対応範囲を聞いてから決めてください。
よくある質問
あわせて読みたい
あわせて読みたい
あわせて読みたい
まとめ|最初の2週間で「役所の日」と「ハローワークの日」を作る
退職後の手続きは多く見えますが、期限が厳しいのは健康保険(14日/任意継続20日)・年金(14日)・失業保険(離職票が届いたらすぐ)の3つだけです。この3つを最初の2週間で終わらせれば、あとは住民税・確定申告・企業型DCを忘れずに、で足ります。
今日できることは、離職票がいつ届くか確認して、役所に行く日を決めること。それだけで、退職後の不安の半分は消えます。各制度の細かい部分は、この記事の各リンク先でひとつずつ確認してください。
※本記事は2026年9月時点で、厚生労働省・日本年金機構・国税庁・各自治体の公表情報および一般的な運用をもとに作成しています。保険料・期限・必要書類は市区町村や加入先の健康保険によって異なります。金額はすべて概算です。実際の手続きの前に、必ず管轄の窓口で最新の内容をご確認ください。当サイトはアフィリエイト広告を掲載していますが、報酬の有無で内容を変えていません。




