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「懲戒解雇って、普通の解雇と何が違う?」「退職金はゼロになる?」「転職できなくなる?」——懲戒解雇は、会社が出せる処分のなかでいちばん重い処分です。それだけに、会社が自由に出せるものではなく、法律と判例で細かいルールが決まっています。
この記事では、懲戒解雇の意味と条件、退職金・解雇予告手当・失業保険への影響、納得できないときの対応を、労働契約法・労働基準法と裁判例、厚生労働省や労働局の資料に沿って整理しました。
・理由に合理性がなく、重すぎる処分は権利の濫用として無効(労働契約法15条・16条)
・懲戒解雇でも、労基署長の除外認定がなければ解雇予告手当(30日分)の支払いが必要
・退職金の全額不支給は「勤続の功を抹消するほどの重大な背信行為」がある場合に限られ、一部支給を命じた裁判例もある
・重責解雇と判断されると失業保険の給付制限は3か月
目次
懲戒解雇とは|もっとも重い懲戒処分
懲戒解雇は、重大な規律違反や非行をした社員に対して、懲戒処分(制裁)として行う解雇です。一般に予告なしの即時解雇とされ、退職金も減額・不支給とされることが多い処分です。
| 種類 | どんな解雇か | 主な違い |
|---|---|---|
| 懲戒解雇 | 重大な規律違反・非行への制裁としての解雇 | 就業規則に根拠が必要。もっとも重い懲戒処分 |
| 諭旨解雇 | 懲戒解雇に相当する事案で、情状を考慮して退職を勧め、本人が応じる形の処分 | 懲戒解雇より少し軽い扱い。退職金が一部支給されることも。内容は会社の就業規則しだい |
| 普通解雇 | 勤務成績不良など、労働契約を続けることが難しい事情による解雇 | 制裁ではない。30日前の予告か予告手当が必要 |
出典:東京労働局「労働基準法 解雇編」、大阪府「懲戒処分」資料、福島県労働委員会Q&A
懲戒処分には、軽い順に、けん責(始末書を出させて将来を戒める)、減給、出勤停止などがあり、懲戒解雇はその一番上に位置づけられています(厚生労働省のモデル就業規則の規定例)。会社によっては、降格や諭旨解雇を定めているところもあります。
会社が懲戒解雇するための条件
① 就業規則に定めがあり、周知されていること
最高裁は、会社が社員を懲戒するには、あらかじめ就業規則に懲戒の種類と理由を定めておく必要があるとし、その就業規則が社員に周知されていることも必要だと判断しています(フジ興産事件・最高裁平成15年10月10日判決)。就業規則にない理由で懲戒解雇することはできません。
② 理由に合理性があり、処分が重すぎないこと
労働契約法15条は、懲戒が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利の濫用として無効になると定めています。懲戒解雇は解雇でもあるので、解雇についての16条も関係します。
- ✅ 就業規則の懲戒解雇の理由に、本当に当てはまるか
- ✅ 行為の内容に比べて、解雇という処分が重すぎないか
- ✅ 同じような違反をした他の社員と比べて、不公平な扱いではないか
- ✅ 同じ行為で、すでに別の懲戒処分を受けていないか(二重処分)
- ✅ 本人に言い分を述べる機会(弁明の機会)が与えられたか
弁明の機会については、法律に明文の規定はありませんが、就業規則に定めがなくても原則として与える必要があると解されている、と福島県労働委員会は説明しています。
懲戒解雇になりやすい理由の例
厚生労働省のモデル就業規則(旧版)では、懲戒解雇の理由の例として次のようなものが挙げられていました。実際にどんな行為が懲戒解雇になるかは、会社の就業規則に何が書かれているかで決まります。
| 理由の例(要旨) |
|---|
| 重要な経歴を偽って採用された |
| 正当な理由のない無断欠勤が続き、出勤の督促に応じない |
| 遅刻・早退・欠勤を繰り返し、何度注意されても改めない |
| 故意または重大な過失で会社に重大な損害を与えた |
| 会社内で窃盗・横領・傷害などの犯罪にあたる行為をした |
| 職務上の地位を利用して私利を図った、不当な金品を受け取った |
| 業務上の重要な秘密を漏らした |
| 私生活上の非行で会社の名誉・信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を与えた |
出典:厚生労働省「モデル就業規則」(旧版)。最新版は令和7年12月版
なお、モデル就業規則でも「平素の服務態度その他情状によっては、普通解雇や減給・出勤停止とすることがある」とされています。理由に当てはまれば必ず懲戒解雇、というわけではありません。
懲戒解雇でも解雇予告手当はもらえる?
会社が社員を解雇するときは、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法20条)。「労働者の責に帰すべき事由」による解雇はこの例外ですが、例外を使うには労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けなければなりません(同条3項・19条2項)。
除外認定の基準として、通達(昭和23年11月11日基発1637号・昭和31年3月1日基発111号)では次のような例が示されています(福井労働局資料・厚生労働省「確かめよう労働条件」)。
| 除外認定の基準の例 |
|---|
| 事業場内での盗み・横領・傷害など、刑法犯にあたる行為(極めて軽微なものを除く) |
| 賭博や風紀を乱す行為などで職場の規律を乱し、他の社員に悪い影響を与えた |
| 採用の条件になるような経歴の詐称 |
| 他の事業場への転職 |
| 原則として2週間以上、正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない |
| 出勤不良を何度注意されても改めない |
ただし、認定は個々の事情を総合的に見て判断され、就業規則の懲戒解雇の理由には縛られません。また、除外認定は「予告手当を払わなくてよいか」を確認するもので、解雇そのものが有効かどうかは別の問題です(岩手労働局資料)。
懲戒解雇されたら退職金はどうなる?
退職金の規程に「懲戒解雇の場合は減額・不支給」と書かれていれば、減額・不支給とされることがあります。ただ、厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、裁判例をふまえて、減額・不支給が認められるのは長年の功績を失わせるほどの重大な背信行為がある場合などに限られると整理しています。また、懲戒解雇が有効かどうかと、退職金を払うかどうかは別に判断されます。
| 裁判例 | 内容 |
|---|---|
| 小田急電鉄事件(東京高裁平成15年12月11日判決) | 電車内での痴漢行為(過去にも検挙歴あり)による懲戒解雇は有効としたうえで、退職金の全額不支給は認めず、本来の額の3割の支払いを命じた |
このように、懲戒解雇=退職金ゼロとは限りません。規程の内容と、行為の悪質さ、勤続年数などによって判断が分かれます。
懲戒解雇でも失業保険はもらえる?
懲戒解雇でも、雇用保険の加入期間などの条件を満たせば失業保険(基本手当)は受けられます。ただし、ハローワークが「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)」と判断すると、次のような扱いになります。
| 項目 | 重責解雇の場合 |
|---|---|
| 給付制限 | 待期7日の後、3か月は基本手当が出ない(自己都合退職は原則1か月) |
| 特定受給資格者 | 対象外(会社都合の解雇とは扱われない) |
| 教育訓練による給付制限の解除 | 条文上、自己都合退職の人に限られるため対象外 |
出典:雇用保険法33条、厚生労働省「基本手当の給付制限」、ハローワークインターネットサービス
懲戒解雇が必ず重責解雇になるとは限りません。重責解雇にあたるかどうかは、離職理由としてハローワークが判断します。
転職や履歴書への影響は?
懲戒解雇を受けたことは、転職活動で不安に感じるところだと思います。確認できた事実は次のとおりです。
- ✅ 厚生労働省が示している履歴書の様式例には、賞罰欄はない
- ✅ 退職証明書には、本人が請求した事項だけが書かれる。退職の理由(解雇の理由を含む)を書かないよう求めることもできる(労働基準法22条)
- ✅ 採用の条件になるような経歴をごまかして入社すると、それ自体が懲戒解雇の理由になりうる
面接で前職の退職理由を聞かれたときにどう答えるかは、事実を偽らない範囲で伝え方を考えるのが基本です。うその経歴は、入社後に経歴詐称として問題になるおそれがあります。
懲戒解雇を言い渡されたら、まずやること
納得できないときの相談先・争い方
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(労働局・労基署) | 無料。相談のほか、労働局長の助言・指導を受けられる |
| 紛争調整委員会のあっせん | 無料・非公開。会社の参加は任意で、合意できなければ打ち切り |
| 労働審判(裁判所) | 裁判官と労働審判員が、原則3回以内の期日で審理。まず調停を試み、まとまらなければ審判。異議が出れば訴訟に移る |
| 訴訟 | 解雇が有効かどうかを最終的に判断する |
懲戒処分を社内外に公表された場合、処分が無効なら名誉毀損として慰謝料が認められる場合もありうる、と大阪府の資料は指摘しています。
よくある質問
まとめ|懲戒解雇は「就業規則」と「相当性」で決まる
- ✅ 懲戒解雇はもっとも重い懲戒処分。就業規則に根拠と周知が必要
- ✅ 合理的な理由がなく重すぎる処分は無効(労働契約法15条・16条)
- ✅ 予告手当なしの即日解雇には労基署長の除外認定が必要
- ✅ 退職金の全額不支給は限定的。一部支給を命じた裁判例もある
- ✅ 重責解雇と判断されると失業保険の給付制限は3か月
- ✅ 納得できなければ、理由を書面でもらい、労働局のあっせんや労働審判を検討



