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長く勤めた会社を定年で辞めるとき、「健康保険はどうする?」「年金の手続きは?」「失業保険はもらえる?」と、やることの多さに戸惑う人は少なくありません。しかも、60歳で辞めるか、65歳で辞めるかで、使える制度や手続きが変わります。
この記事では、定年退職のあとにする手続きを期限の早い順の一覧表にまとめ、60歳(60〜64歳)と65歳以上で違う点を、日本年金機構・協会けんぽ・ハローワーク・国税庁の案内に沿って整理しました。人事・労務の実務で、定年退職者の手続きを数多く担当してきた経験をもとに解説します。
・本人の国民年金の加入は60歳までなので、60歳以上で定年退職した人は、原則として国民年金への切り替えは不要
・失業保険は、60〜64歳なら基本手当(定年退職は給付制限なし)、65歳以上なら一時金の高年齢求職者給付金。しばらく休みたい60歳以上の定年退職者は、離職日の翌日から2か月以内に申請すれば受給期間を最長1年延ばせる
・年金は自動では始まらない。年金請求書(受給開始年齢の3か月前から届く)を出して請求する
・退職金は「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば、原則として確定申告はいらない
目次
定年退職後の手続き一覧表|期限の早い順
まずは全体像です。上から順に片づけていけば、漏れがありません。
| 時期・期限 | 手続き | 窓口 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 退職前 | 退職所得の受給に関する申告書を会社に出す | 会社 | 出しておけば、退職金の税金は源泉徴収で完結する |
| 退職前 | 企業型確定拠出年金(DC)の扱いを確認 | 会社・運営管理機関 | 受け取るか、iDeCoへ移すかを決める |
| 退職日の翌日から14日以内 | 国民健康保険に入る(国保を選ぶ場合) | 市区町村 | 任意継続・家族の扶養と比べてから選ぶ |
| 退職日の翌日から20日以内 | 健康保険の任意継続(任意継続を選ぶ場合) | 協会けんぽ・健保組合 | 最長2年。保険料は全額自己負担 |
| 退職日の翌日から14日以内 | 配偶者の国民年金の切り替え(配偶者が60歳未満で第3号だった場合) | 市区町村 | 第3号→第1号。本人は60歳以上なら原則不要 |
| 離職票が届いたら | 失業保険の申し込み(働く意思がある場合) | ハローワーク | 60〜64歳は基本手当、65歳以上は高年齢求職者給付金 |
| 離職日の翌日から2か月以内 | 受給期間の延長(しばらく休みたい場合) | ハローワーク | 60歳以上の定年退職者が対象。最長1年延長 |
| 受給開始年齢になったら | 年金の請求 | 年金事務所 | 年金請求書は受給開始年齢の3か月前から届く |
| 翌年(還付申告は1月から、確定申告は2月16日〜3月15日) | 確定申告(必要な人・還付を受けたい人) | 税務署 | 年の途中で辞め、年末調整を受けていない人は還付の可能性 |
| 翌年6月ごろ〜 | 住民税の納付(普通徴収) | 市区町村 | 前の年(退職した年)の所得に対してかかる |
健康保険|任意継続・国保・家族の扶養から選ぶ
会社の健康保険は、退職日の翌日に資格がなくなります。次の3つから、自分に合うものを選んで手続きします。
| 選び方 | 期限・条件 | 保険料 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 任意継続(今の健康保険を続ける) | 退職日の翌日から20日以内に申請。退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上。最長2年 | 会社負担がなくなり全額自己負担。ただし保険料の計算に使う標準報酬月額には上限がある(協会けんぽは2026年度32万円) | 在職中の給料が高めだった人、扶養家族がいる人 |
| 国民健康保険(国保) | 退職日の翌日から14日以内に市区町村で手続き | 前年の所得などで決まる。退職した翌年は保険料が高くなりやすい | 任意継続より安くなる人。市区町村で試算してもらえる |
| 家族の扶養に入る | 60歳以上は、年収見込みが180万円未満(かつ扶養する人の年収の2分の1未満など) | かからない | 年金や失業保険を含めた収入が条件内に収まる人 |
任意継続と国保のどちらが安いかは、人によって違います。国保の保険料は市区町村の窓口で試算してもらえるので、任意継続の保険料(協会けんぽ・健保組合で確認)と比べてから決めると安心です。
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続被保険者制度」、令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限(32万円)
定年で会社を辞めると、会社の団体保険(団体定期保険など)が終わることがあります。現役のころの保障や保険料のままでよいか、このタイミングで一度確認しておくと安心です。
退職すると、会社の団体保険が終わったり、収入が給料から退職金・年金・失業保険に変わったりします。現役のころの保障や保険料のままでよいか、辞める前に一度確認しておくと安心です。
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年金|60歳以上は国民年金の切り替えが原則不要。配偶者の手続きに注意
本人の国民年金
国民年金に入る義務があるのは20歳以上60歳未満の人です。そのため、60歳以上で定年退職した人は、原則として国民年金への切り替えはいりません。ただし、年金の受給資格期間が足りない人や、老齢基礎年金を満額に近づけたい人は、65歳まで任意加入できます。
配偶者の国民年金(第3号→第1号)
会社員の配偶者として「第3号被保険者」だった配偶者が60歳未満なら、本人が会社を辞めると第3号ではなくなります。配偶者は退職日の翌日から14日以内に、市区町村で第1号被保険者への切り替えの手続きが必要です。忘れやすいので、最初の14日のうちに済ませましょう。
年金の請求|自動では始まらない
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年金請求書 | 受給開始年齢になる3か月前から、日本年金機構から届く(2026年は、65歳になる1961年4月2日〜1962年4月1日生まれの人などが対象) |
| 請求できる時期 | 受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金事務所などへ提出する |
| 65歳前の年金(特別支給の老齢厚生年金) | 男性は1961年(昭和36年)4月1日以前、女性は1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれ、厚生年金に1年以上入っていた人などが対象。生年月日で受け取り始める年齢が違う |
| 繰下げ | 65歳で受け取らず、66歳以降に遅らせると、1か月あたり0.7%増える |
出典:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」「老齢年金請求書の事前送付」
失業保険|60〜64歳と65歳以上で仕組みが違う
| 退職した年齢 | もらえるもの | ポイント |
|---|---|---|
| 60〜64歳 | 基本手当(いわゆる失業保険) | 定年退職は給付制限なし(7日の待期のみ)。働く意思と能力があることが条件 |
| 65歳以上 | 高年齢求職者給付金(一時金) | 基本手当の30日分または50日分をまとめて受け取る。年金と同時にもらえる |
定年のあと「しばらくはゆっくりしたい」という人は、60歳以上の定年退職者向けの受給期間の延長を使えます。離職日の翌日から2か月以内にハローワークで申請すると、受給期間を最長1年延ばせます。期限が短いので、休むと決めたら早めに手続きしましょう。
税金|退職金・確定申告・住民税
| 税金 | すること |
|---|---|
| 退職金の所得税 | 「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば、退職所得控除を反映して源泉徴収され、原則として確定申告は不要。出していないと20.42%が差し引かれ、確定申告で精算する |
| 給与の所得税(確定申告) | 年の途中で辞めて年末調整を受けていない人は、翌年に確定申告をすると、払いすぎた税金が戻ることが多い |
| 年金の確定申告 | 公的年金等の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要(還付を受けたいときは申告できる。住民税の申告が必要な場合はある) |
| 住民税 | 住民税は前の年の所得にかかる。退職した翌年の6月ごろから、退職した年の所得にかかる住民税の納付書が届く |
出典:国税庁「公的年金等を受け取っている方へ(確定申告不要制度)」
忘れがちな手続き|企業型DC・再雇用で働く場合
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 企業型確定拠出年金(DC) | 加入していた人は、年金・一時金で受け取るか、iDeCoに移すかを決める。扱いは加入期間や勤務先の規約で変わるので、退職前に運営管理機関に確認しておく |
| 再雇用で働き続ける | 60歳以降に賃金が大きく下がった人は、雇用保険の高年齢雇用継続給付の対象になることがある(会社を通じて申請) |
| 会社の福利厚生 | 団体保険、社宅、社員証、健康診断の扱いなど、退職後に使えなくなるものを確認する |
60歳で辞める人と65歳で辞める人の違い(まとめ)
| 項目 | 60〜64歳で定年退職 | 65歳以上で退職 |
|---|---|---|
| 失業保険 | 基本手当(給付制限なし) | 高年齢求職者給付金(一時金) |
| 年金との関係 | 基本手当の受給中は特別支給の老齢厚生年金が止まる | 年金と同時にもらえる |
| 本人の国民年金 | 原則不要(任意加入はできる) | 不要 |
| 配偶者の国民年金 | 配偶者が60歳未満なら第1号への切り替えが必要 | 同じ |
| 健康保険 | 任意継続・国保・家族の扶養(60歳以上は年収180万円未満) | 同じ(75歳からは後期高齢者医療制度) |
よくある質問
まとめ|定年退職後は「最初の14日」と「2か月以内」を押さえる
- ✅ 退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を出し、企業型DCの扱いを確認する
- ✅ 健康保険は、任意継続(20日以内)・国保(14日以内)・家族の扶養から選ぶ
- ✅ 60歳以上の本人は国民年金の切り替えは原則不要。配偶者が60歳未満なら第1号へ切り替える
- ✅ 失業保険は、60〜64歳は基本手当(給付制限なし)、65歳以上は高年齢求職者給付金
- ✅ しばらく休むなら、離職日の翌日から2か月以内に受給期間の延長を申請
- ✅ 年金は請求しないと始まらない。年金請求書が届いたら手続きする




